指切りげんまん ページ11
「そういえば、もう機嫌はよろしいのですか？」
山へ帰るAを見送る為、チーノは城門までの道をAと並んで歩く。
少し無言が続いたところで、Aが隣の男を見上げた。
「…やから、拗ねてへんって言うてるやん」
「そうですか？…でしたら、私はまだ修行が足りていないのですね」
先程まで幼い子どものように拗ねていたことを思い出し、今更それが恥ずかしくなったのか、チーノは顔を背ける。
その反応を見て、Aは少し視線を落としてしまった。
「…ごめん嘘！拗ねてました！！」
と声を上げ、両手で顔を隠ししゃがみ込むチーノ。
嘘をついた罪悪感に耐えられなかったようだ。
「…何故、嘘を？」
Aはチーノの正面に回り、同じようにしゃがんだ。
「Aが他の奴らを指導してんの見て…嫉妬して、拗ねました」
「…私がグルッペンさんの頼み事を受けたの、嫌だったのですか？」
「うん」
さっきまでの態度とは裏腹に、正直に答えるチーノ。
「それはすみませんでした、気づけなくて。……でも、私に嘘はつかないで下さい。貴方に嘘をつかれてしまったら、私は間違いを覚えてしまいますから」
そう言ったAは、いつもウィル・テリアムの話をする時みたいに優しい眼差しで、自然な笑みをチーノに向けていた。
チーノはそれがたまらなく嬉しくて、Aに笑顔を返した。
「俺、感情の師匠やもんな！気ぃ付けます、ん、約束！」
「…はい。そうしてくれると助かります。私も気づけなくてすみませんでした」
チーノがスッと小指を差し出す。
Aは、過去恩師と同じことをしたのを思い出し、その指に自分の小指を絡ませた。
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作者名：Blue Berry | 作成日時：2020年12月10日 15時
