トゲ。 ページ9
あれから何回もパブに通ったけど、
Aには会えずにいた。
「ヒョン!Aの連絡先、教えて!」
YGのスタジオ。
もうヒョンしか頼れる人はいない。
ユウタさんに聞いても「客の個人情報だから」の一点張り。
「知らない。」
ヒョンは俺に目もくれず、一言それだけ。
「嘘つけ、知り合いなんだろ?
Aだって、Teddyヒョンのことオッパって呼んでた。」
「ジヨン、お前Aと会ったのか?」
「うん、こないだパブでやっと会えて。
一緒に酒飲んで…」
「で?…寝たのか?」
「うん、寝たけど。」
俺の返事に、ヒョンは大きなため息をついた。
「じゃあ、もうやめとけ。
パブに行くのも、もうやめろ。」
「なんで??」
「Aは一度、寝ちゃったら終わり。
次会えたとしても、ジヨンに見向きもしねえよ。」
…終わり?
「残念ながら、そういう女なの、Aは。
だから言っただろ?遊びだけにしとけって。」
意味が分からない。
てか、その言い方…
「…え、もしかして、
ヒョンもAと寝たことあんの!?」
よろしくない考えが一瞬頭によぎる。
TeddyヒョンとA…?
「ねえよ。でもAと寝て、惚れて、ハマって、
ことごとく傷付けられてる男、何人も見てきたし。
だから、俺は安全な方を選んだ。」
「なんだよ、安全な方って。」
「俺は同じ客の一人としての付き合いを選んだってこと。
俺だって分かるよ、Aが魅力的なのは。」
俺の知ってるAとヒョンの話すAは、全くの別人で。
あの日だって、Aは笑顔で、楽しそうで。
残したメモの『さようなら』って、そういうこと?
「綺麗な薔薇にはトゲがあるっていうだろ。」
ヒョンはそう言って、やっと俺と目を合わせた。
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作者名:carly | 作成日時:2020年5月20日 21時