The Bubble 1st (ページ8)

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トゲ。ページ8

クーン…

ガホの鳴き声で目が覚める。
もう外も明るく、朝が来ていた。

シーツの中で大きな伸びをして、隣を見る。

あれ、いない。
空になった隣を見て、起き上がった。

Aの服もない。
床に散らばるのは、俺の服だけ。
トイレか？そう思ってリビングに向かう。

部屋のどこを見ても、Aの姿はなく、
昨夜閉めたはずの玄関の鍵は、開いていた。

マジかよ…

「おい、ガホ。起こせよー。」

１ミリも罪もないガホの頬を、つまんだ。

連れて帰った女が、朝起きていなくなってたのは初めてだった。

携帯を開いてみるけど、俺、Aの連絡知らねえや…

昨日の、夢じゃないよな？
そんな不安が、一瞬、俺を襲う。

でも、昨日のコトの記憶は鮮明で、
美しいAの姿も、色っぽい顔も、
柔らかい声も、匂いも、俺の肌に伝わった熱も、
いとも簡単に、思い出せる。

なんで、何も言わずに帰るかなあ…

大きなため息が漏れる。

次会うにはどうしたらいい？
またパブに行けば、会える？

いなくなったAが恋しくて、
Aの痕跡を探すように、寝室に戻った。

キングサイズのベッドの横。
サイドテーブルに小さなメモを見つけた。

『楽しい夜をありがとう。さようなら。』

綺麗な字でそう書かれてる。
その一行だけ。俺の名前も、Aの名前もない。

さようならって、なに？

最後の願いを込めて、メモをひっくり返して
裏側まで見てみるけど、なにも書かれていなかった。