一緒に。 ページ35
少し冷たい空気が頬を刺す。
やっと会えたAは俺のことを歓迎しなかった。
「…なんなの？
ジヨンのいないところでは、
何してもとやかく言わないって言ったじゃん。」
俺が追い返したタクシーを目で追いながら、
Aは吐き捨てるようにそう言った。
確かにそう言ったけど……欲が出たんだ。
「…やっぱり嫌なんだよ、どうしようもなく。
こんなこと、やめて。」
どうしても嫌だった。
格好悪いのは、充分に分かってる。
Aからすれば、一度関係を持っただけの男が、
しつこく、執着してるように感じる？
髪をかき上げて、夜空を見上げると自然とため息が漏れた。
「…こんなことって、
ジヨンともそうだったじゃない。」
Aの言うことは正しくて、残酷だった。
…そうだった、そうだったけど。
「分かってるの、
私、ジヨンのこと傷つけてるでしょ。
もう会わない方がいいよ、私たち。」
会わない方がいい、なんてAが言う。
ここで、Aを逃したら、もう捕まえられない。
何回会っても、いつまで経ってもそう思ってしまう。
俺の手を振りほどこうとするAについ手に力が入る。
「好きなんだよ。」
俺の言葉にAは黙ったまま、
少し驚いた顔して、俺を見つめた。
Aへの独占欲や執着心だけじゃなくて、
フラフラで、倒れそうになりながらも、
あんな方法でしか癒されないAを見ていられなかった。
「好きだ。」
Aの腕を引き、抱きしめる。
Aは俺を抱き返すことはなかったが、
身体を少しだけ俺に預けた。
「一緒に帰ろう。」
Aの体温を感じながら、そう呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 175人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：carly
| 作成日時：2020年5月20日 21時
