The Bubble 1st (ページ33)

今日:17 hit、昨日:58 hit、合計:75,963 hit

傷付けたくない。ページ33

彼じゃなくたっていい、誰だっていい。
彼にとっても私じゃなくてもいい。
それが楽だった。

通りに出て、彼がタクシーを捕まえる。

先に乗り込む彼に続いて、
乗り込もうとタクシーに近づいた時、

「Aっ！」

私を呼ぶ声がして、声のする方に顔を向けると、
パブから走って来たのか、少し息を切らしたジヨンが
そこにいた。

「…ジヨン。」

「…A、俺、嫌だよ。」

ジヨンは肩で息をしながら、そう言って私の腕を掴んだ。

ジヨンにはもうこんな姿は見せたくなかった。
そうやって、悲しそうな顔するから。

だから、最初のあの夜だけで良かったのに。
あの夜だけが良かったのに。

ジヨンが私を逃してくれないから、こんなことになる。

「…なに？なんで？
もう放っておいてよ…」

最後の最後まで人のせいにする私。

「やだって。」

ジヨンはそう言って、私の手を離そうとはしない。

「何してんの？早く乗りなって。」

タクシーの中から聞こえる彼の声に、
ジヨンの顔が歪むのが見える。

「もうやめろって。こんなの。」

ジヨンはそう言って、私の手を引いて、
タクシーから離し、歩道の内側に引き寄せた。

「…もうやめてよ、放っておいてよ」

私の言葉を無視して、
ジヨンはタクシーに近づき、中を覗き込んだ。

ジヨンは彼に何かを告げ、私の方に振り向く頃には、
タクシーは彼だけを乗せて、走っていってしまった。