関係ない。 ページ25
「ジヨンが本読んでるの珍しいな。」
大柄な体格のマネヒョンが、そう言って、
俺が読んでる本の背表紙を覗き込んだ。
雑誌の撮影の合間、
セットの入れ替えに時間が掛かると聞き、
俺は、控え室に戻ってきていた。
「お!イ・ソラか。
…お前もセンスがいいな。」
ニヤリと笑いながら、ヒョンがそう言った。
Aが書いた本なんて聞けば、読まずにはいられなかった。
「ヒョンも読んだ?」
「ああ。うちのフィアンセが大ファンでさ。」
"フィアンセ"の部分を無駄に強調して、
そう言うヒョンは、先月、婚約したばかりだった。
「大学生でそんなの書くんだから、そりゃ凄いよ。」
ヒョンが、俺の持ってる本を指差してそう言った。
「確かに。」
大学生でベストセラーって…
Aはどんな学生だった?
歌やダンスに明け暮れる俺とは違って、
優等生で、感想文とかで賞を取っちゃうような子?
なんて、俺が出会う前のAを想像してみる。
「俺は、1作目のそれが一番好きなんだけどさ、
俺の彼女は、3作目が一番好きらしくて。」
「3作目ってどんな話?」
「恋愛ものだよ。」
「…恋愛もの?」
聞き返した俺に、ヒョンは頷いた。
Aが、恋愛ものか…
なんか、うまく想像できなかった。
恋だとか、愛だとかに、
残酷なほど興味がないAが、恋愛もの?
「イ・ソラの新作、なかなか出ないんだよな〜。
もう2年?出してないんだぜ。」
独り言のようにそう呟くヒョンを横目に、
書きたいことがないから、と言ってたAを思い出した。
小説を書き続ける自信がなかった。
そうとも言っていた。
書いたらいいのに。
なんて、無責任なこと思うのは、
Aが書く本を読めば、なんか少しくらい、
Aのことが分かるんじゃないかっていう期待からだった。
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作者名:carly | 作成日時:2020年5月20日 21時