The Bubble 1st (ページ20)

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笑って。ページ20

Aがまとう雰囲気は、
俺がイメージする小説家のそれとは、
大きくかけ離れている。

「小説家？」

聞き返した俺に、頷く様子もないA。

小説家。
その答えは、宝くじ当選と同じくらい
意外で、俺には信じられないものだった。

「…マジで？」

なんだか信じられなくて、
確認を取るようにユウタさんに視線を送ると、
ユウタさんは無言で頷いて、口を開いた。

「こいつ、イ・ソラだよ。」

煙草の煙を吐きながら、ユウタさんがそう言った。
Aはユウタさんを睨み、大きくため息をついた。

「イソラって…あのイ・ソラ？！」

『イ・ソラ』の名前は、本を読まない俺でも知ってる。
彼女が話題になったのは、４年程前でまだ記憶に新しい。

韓国で最も大きな賞を取ったのが、
現役大学生だって話題になっていた。

そのニュースをテレビで何度も見てたし、
俺より歳下のやつがこんな賞をとるなんて、
俺も歳食ったんだなって思いながら見てたのを覚えてる。

「そう。あのイ・ソラ。」

ユウタさんが頷きながら、繰り返した。

Aと出会う前から、俺はAを知ってた。
説明できないその不思議な感覚が、俺を包んだ。

「バーテンダーは客のこと、
ベラベラ話さないんじゃなかったの？」

Aは言いたくなかったのか、不機嫌な顔。

「もう仕事終わってるつもりだし。
…あ、お酒は飲みたかったら作るからね。」

煙草を持ち上げて見せて、
仕事中とはまた違う柔らかい表情で、ユウタさんはそう言った。

「金は取るくせに。」

「当たり前だろ。
俺はベストセラーの小説家でもないし、
BIGBANGでもないんだから、金にはシビアなの。」

Aとユウタさん２人の会話をよそに、
俺は突然聞かされた話を、そう簡単には信じられずにいた。