生意気女と嘘つき男。 ページ12
「A、こないだ先帰ったじゃん？
あの日、ガホいなくなっちゃったんだよね。」
ジヨンが遠くを見つめながら、そう呟く。
「…え？嘘…」
「本当。
Aが出てって、鍵開けっぱなしだったから、
出て行っちゃったみたいで。」
玄関先で、見送ってくれたガホを思い出すと、
居ても立っても、いられなくって。
「そんなのっ！
こんなとこで、飲んでる場合じゃないじゃん！
…ユウタ！お金、置いとくから。」
ジヨンの分もお金を置いて、
カウンターの奥でグラスを洗うユウタに声をかけた。
ジヨンの腕を掴み、パブを出る。
「ちょ、どこ行くの？」
「どこって…どこ？
…とりあえずジヨンち！！」
ガホ、探さないと。
私はタクシーを捕まえ、ジヨンを奥に押し込んだ。
タクシーは私とジヨンを乗せて、夜のソウルの光の中を進んだ。
ジヨンのマンションに戻ると
あの日の事を嫌でも思い出した。
「入って。」
ジヨンが玄関の扉を開けて、私を先に部屋に入れた。
玄関でガホが床にお座りをして、
つぶらな瞳で私を見上げた。
そこで、全てに気付く。
「待って。嘘ついたの？…帰る。」
そんな私の後ろで、
ジヨンはドアにしっかり鍵をかけた。
「帰すと思う？」
ジヨンを睨む私と真っ直ぐ見つめ返すジヨン。
そんな二人を他所に、
ガホは私を歓迎するように脚に飛びついた。
「ほら、抱っこ。してあげて？」
ジヨンがわざとらしい笑顔でそう言う。
私はガホをゆっくり抱き上げた。
無事で良かった。
温かいガホを抱きしめて、心からそう思った。
「大成功〜！」
ジヨンは私の腕に収まるガホの左の前足を
持ち上げて、その肉球にハイタッチして見せた。
「最低。嘘つき。鬼。」
「お互い様じゃない？
俺のことヤリ捨てるなんて、最低。生意気。鬼。」
ジヨンが呆れた目をして、
そう言い返すから、ぐうの音も出ない。
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作者名：carly
| 作成日時：2020年5月20日 21時
