忘れちゃいけないこと。 ページ48
余裕たっぷりのジヨンに
なんだか少し反抗したくなる。
目の前のジヨンの顔に手を伸ばして
その綺麗な額を中指の爪で勢いよく弾いた。
パン！って、
思ったより大きな音がなる。
「…いった！！」
ジヨンは額を押さえて眉間に皺を寄せた。
「デコピンなんて小学生かよ…」
額に手を当てたままのジヨンが小言を呟く。
「これで、あいこにする…(笑)」
「赤くなりそう…」
痛いんだけど(笑)
って笑いながら言うジヨン。
ジヨンとの時間。楽しい時間。
G-DRAGONだってこと、
不意に忘れそうになる時間。
結局またジヨンに家まで送ってもらった。
ジヨンの車を降りて扉を閉め、
お礼を言おうと運転席のジヨンを覗き込むと
「また誘うから飯いこ。」
そう言うジヨン。
「ああ、うん。」
サングラスに覆われた瞳からは
ジヨンの感情を読むことはできない。
「お礼、してね。」
重ねて確認するようにそう言うジヨン。
「もちろん…するよ。」
「じゃあ、またね。」
似合わない街並みを
走り抜けていくランボルギーニ。
あっという間に縮まったジヨンとの距離。
長い付き合いの友達のように
感じてしまってるこの居心地の良さが
何だか間違っているような気がする。
ジヨンを見送って部屋に戻ると
いつ買ったか思い出せないような
数年前のBIGBANGのアルバムを広げた。
真ん中で笑みを浮かべるG-DRAGON。
忘れないようにしなくちゃ。
居心地良さに忘れたりしちゃダメだ。
ジヨンがG-DRAGONだってこと。
忘れちゃいけないこと。
広げたアルバムを片付けもせずに、
コンサートのDVDを取り出した。
プレイヤーに入れて、再生ボタンを押す。
無数のペンライトと、ステージに立つ彼。
自分に思い知らせるように
ステージの上から客席に微笑む
G-DRAGONを目に焼き付けた。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
