今はただ。 ページ42
"お前もまだそんな親しくないんだ？"
"気になったから。顔がタイプだなって。"
癪に触ったタッピョンの言葉。
このままだと、
タッピョンか、もしくは他の奴が、
Aに手を出すんじゃないか。
なんて、感じて。
こんな形で、Aのことを強く意識するなんて、
間違っているような気もするし、失礼な気もする。
でも、他の人に渡したくなくて。
俺だけで充分でしょ？
そう思いたくて。
まだ親しくない、なんて、
外野のタッピョンに言われたら、
Aとの距離を埋めたくなった。
煽るようなタッピョンの言葉にまんまと乗せられて、
きっと安心がしたくて、Aを連れ出した。
まだ誰のものでもないAを。
俺の部屋にたどり着き、
リビングにAを通した。
「適当に座って。水でいい？」
対面キッチンの奥の冷蔵庫に手を伸ばしながら、
Aにそう声をかける。
「うん、ありがとう。」
座っててって言ったのに、
Aはリビングの壁一面の窓に足を進めた。
俺の方に背を向けて、窓の外を見つめるA。
「何見てんの。」
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを手に
窓際に立つAに近づいて、肩を並べた。
「いや、前来た時は雨だったでしょ？
晴れの日はもっと綺麗に見えるんだなって。」
窓の外を見つめるAの横顔。
Aと再会した日は雨に濡れてたソウル。
今は初夏の日差しがビルの隙間にも漏れなく差し込む。
「あの日、ここから土砂降りの街を見て、
心からジヨンに感謝したの。」
窓の外を見つめたまま、そう呟くA。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
