予想外。 ページ5
動き出した車。
雨の音が車内に響く。
「…何してたの？あんなとこで。」
ジヨンは白いタオルで髪をワシャワシャと拭きながら、
私に視線を向けて、そう尋ねた。
ヨンベの結婚がショックで。
なんて、
ジヨンにはなんだか言いたくなくて、
黙ったまま、頬に伝う雨をタオルで拭いた。
何でこんなタイミングでジヨンと再会するんだろう。
よりによって、ジヨンなんて。
「……寒い？震えてる。」
質問に答えない私にジヨンはそう言って、
私の右手に左手を重ねた。
ジヨンの手は驚くくらい温かくて、
自分の身体が雨に打たれて冷え切っていることを知る。
ジヨンは私の手に温かいその手を重ねたまま、
運転席の方に身を乗り出して助手席に手を伸ばした。
「着てて。」
そして助手席から取り出したパーカーを私の膝に置いた。
「濡れちゃうよ。」
まだビショビショの私の服。
雨が染み込んで幾分か重たくなってる。
「そんなん気にしなくていいから。」
ジヨンはそう言うと、
私の手を離し、黙って窓の外に顔を向けた。
車がたどり着いた先は
立派なタワーマンションだった。
「ほら、早く上がって。」
ぶっきらぼうな言い方でジヨンはそう言うと、
私の背中を追い越して部屋に上がった。
言われるがまま、濡れたせいで脱ぎにくいヒールを
なんとか脱いで、それを揃えて玄関に並べる。
「風呂、そっち。」
ジヨンはどこからかバスタオルを持ってきて、
それを私に突き出すと、廊下の奥を顎で指した。
「…ジヨンは？」
私に負けないくらいビショビショのジヨン。
私のせいでこんなに濡れてしまったのが申し訳なかった。
「そっちはゲスト用。
俺も別で浴びるから、気にせず入ってきて。」
「…ありがと。」
言われるがままにバスタオルを受け取り、
長い廊下の奥に足を進めた。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
