月明かりの下。 ページ28
「水でいい？」
小型の冷蔵庫を開けると、
青白い光がスタジオに漏れる。
「うん。」
ミネラルウォーターのペットボトルの蓋を開けて
Aに差し出した。
もう一つ冷蔵庫から取り出して、
よく冷えたそれを喉に流し込んだ。
「…なんか夢でも見てるみたい。」
ぐるりと部屋を見回したAがそう呟いた。
「夢？」
「うん。ジヨンとYGにいるなんて。」
感慨深そうにそんなこと言うから、
つい笑みが溢れた。
「笑った？」
笑ったことが気に障ったのか
眉を潜めて、疑うように尋ねるAに
「うん、笑った。」
そう言って開き直るように認めてみせると、
少し呆れたようにAも笑った。
「…幸せなファンだよ。」
Aがしんみりとファンだなんて言うから、
Aとのあの約束事を思い出した。
「…あ、ヨンベといつにする？
ヨンベはいつでもいいんだってさ。」
「…話したの？」
少し驚いた顔してAがそう尋ねる。
「うん、会ってほしい子がいるんだけどって話した。」
「…そっか、そっか。うーん…」
「急すぎた？」
「ううん…心の準備は永遠に整わないだろうしなあ。」
少し考え込むようして、
Aは少し投げやりにそう呟いた。
「大丈夫だよ、普通にしてれば。
ゆっくりできる方がよければ夜かな。」
「ゆっくりは無理だよ、私が耐えらない。」
俺の提案にAは苦い顔して首を横に振る。
「…じゃあ、今週末は？
仕事午前だけだし、昼間にサクッと会ってさ。」
「うん、じゃあその日かな…」
「…会いたくない？」
「ううん、そうじゃないけど。
１ファンが偶然ジヨンと再会して、
YGにも来ちゃって、ヨンベとも会うなんて…
トントン進んでいくから、なんかまだ実感なくて。」
目を伏せてAがそう呟いた。
長いまつ毛が頬に影を落とす。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
