満月の夜。 ページ26
ジヨンの吐息を額に感じる。
首元からは香水の匂いが微かにする。
私の肩を抱くジヨンの手の温度と
見た目よりもしっかりとしたジヨンの胸板。
こんな状況に顔が熱くなってきて、
「重いから…！」
ジヨンの身体から離れようとした。
不意に頭を上げると、その勢いのまま
私の頭がジヨンの顎に見事にヒット…
ガンっ！！
大きな音が静かな部屋に響いた。
「…いった(笑)」
痛そうな顔して顎を押さえるジヨンと
この訳わかんない状況が面白くて、
「…ハハハッ(笑)」
つい声を出して笑ってしまった。
「シーッ！静かに！(笑)」
ジヨンは右手で私の口を押さえると、
空いた左手でまた私を抱き寄せた。
そして、その腕に収まった私の足から
ジヨンはハイヒールを器用に脱がした。
解放された足と抱き寄せたジヨンの腕の優しさに
何故か気が抜けて、もう大人しくジヨンのその胸に
身体を預けることにした。
「行ったか？」
その言葉にジヨンを見上げてると
キョロキョロと動く茶色い瞳に睫毛が揺れてる。
「……うん、行ったっぽい。」
電灯の灯りはもうどこかに消え、
スタジオを弱く照らす満月の明かりだけ。
その明かりはジヨンの表情を見るには十分な明るさだった。
「足、平気？」
ジヨンが心配そうにそう尋ねる。
「うん、大丈夫。
あー…可笑しかった(笑)」
デスクの下から這うように抜け出した。
最悪のタイミングで
ジヨンの顎に頭をぶつけてしまったことを
思い出して、笑ってしまった。
「Aが笑うからヒヤヒヤした(笑)」
「だって(笑)……顎、平気？」
ジヨンが並べたヒールの隣に、
ストッキングを履いただけの足で立ち上がり、
ジヨンを見下ろしながらそう尋ねる。
「うん、平気…(笑)
Aは？すごい音したけど(笑)」
ジヨンはまだ机の下で座ったまま
脱力したようにそう言ってまた笑った。
「大丈夫(笑)」
ジヨンの気遣いにそう答えた。
まだなんだか可笑しくて無意識に口角が上がる。
デスクの下のジヨンに、手を差し出した。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
