満月の夜。 ページ25
正直、全然大丈夫じゃなかった。
ジヨンが足を進めるままについて行くと
ジヨンはひとつの扉を開けた。
暗くてよく見えないけど、
作業台やらスピーカーやらが置かれた
スタジオのような部屋。
暗いその部屋に、突然どこからか鋭い光が差し込む。
「…あ、やべ！」
ジヨンはその光を見るや否や、
デスクに向かうように置かれた椅子をどかして
私の手をグッと掴み、デスクの下に引き込んだ。
「なんで…なんで隠れるの？」
真っ暗なスタジオのデスクの下。
隠れるように身を小さくして
肩を並べるジヨンと私。
見回りに来た警備員なのか、
廊下を歩く足音と
電灯の光が時折廊下を照らしてる。
「流石に、私用で使ってるの
バレたら怒られそうだから(笑)」
悪さを覚えた子供みたいな無邪気な顔をして
そう言って笑ったジヨン。
「それに俺ら酔ってるし…」
付け足すようにジヨンはそう言う。
確かに…
私もクラブで何杯かカクテルを飲んだし、
アルコールを飲んでることは見て分かる位に
ジヨンの頬も赤くなっていた。
「これいつまで…？」
狭いデスクの下で、
ジヨンとこんなに至近距離でいることが
長い時間耐えられそうになくて、そう尋ねた。
「ここ通り過ぎるまで。
…もーちょっとだから。」
隠れるように隣で膝を抱えるジヨンがそう言った。
私もじっと身体を小さくして、
時折部屋を照らすその光が何処かに行くのを待つ。
「ヒールしんど…」
つま先にかけてキュッと
狭まったヒールのせいで足が痛い。
細いピンヒールに体重を乗せてしゃがむのが
辛くなってきて、つい独り言を呟く。
「…こっち。」
ジヨンはそう言って腕を軽く広げた。
「…ん？」
ジヨンの言葉の意図が掴めず
その瞳に言葉の意味を聞き返した。
「はやく。」
ジヨンが私の背中を抱き寄せるから
逆らうこともできずにジヨンの胸に倒れ込む。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
