満月の夜。 ページ24
ソアに適当な嘘をついて、クラブを出た。
冷えた空気が頬を通る。
ソウルの夜空には満月が輝いていた。
クラブから外れた路地を覗くと
タバコを吸うジヨンがそこにいた。
「やっほ。」
ヒョイっと片手を上げて見せたジヨンに
「こんばんは。」
そう挨拶をした。
ジヨンはタバコの火を足元で消して、
フラッと路地を抜ける。
「…バレたらどうするの？」
身軽なジヨンの動作が
何故か私をハラハラさせてそう尋ねた。
「さあ？」
なんて暢気なジヨン。
昼間よりはマシなのかもしれないけど
誰かに見つかって騒がれたらと思うと
私の方が気が気じゃなかった。
「どこ行くの？」
「んー、もうちょっと安心できるところ？
着いてきてくれる？」
振り向いてそう言ったジヨンに、私は頷いた。
タクシーでたどり着いた先。
「何だかんだ、こんな時間に
好き勝手使える場所ってここくらいなんだよね。」
ジヨンに続いてタクシーを降りると
YGエンターテインメントだった。
「ヨンベはいないケド…」
付け足すようにジヨンは眉を下げてそう言う。
いなくて良かったよ。
そんなの期待してジヨンに会ったわけじゃないし。
ジヨンはなんの迷いもなく
カードキーで扉を開けて、建物に入った。
深夜もとっくに過ぎた時間。
人気のない真っ暗なロビーを進む。
「…入ってもいいの？」
キョロキョロあたりを見回しながら
ジヨンに恐る恐るそう尋ねた。
「大丈夫、大丈夫。」
ジヨンは安心させようとしてくれてるのか
私にニコッと微笑むと迷うことなく歩き出した。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
