傘。 ページ18
閉めるよ？
囁くようにそう呟くと
助手席の扉を閉めて、運転席に回ったジヨン。
エンジンが掛かり動き出す車。
流れる音楽はBIGBANGの曲だった。
「…この曲、好き。」
「これ？」
ジヨンが少し音量を上げてくれた。
「2012年のコンサートでこの曲歌ったでしょ？
CDで聴いてる時から好きだったけど、
パフォーマンスを見てもっと好きになったの。」
「そんな昔から好きなの？」
少し驚いたような声してジヨンがそう尋ねる。
「ずーっとだよ。ずっと応援してる。」
BIGBANGを追いかけた時間を思い返しながら、
ジヨンの問いにそう答えた。
それから曲が変わるたびに、
誰のどこの歌声が素敵か
歌詞のどのフレーズが好きか
そんな事ばかりを話した。
ジヨンは、うんうんってただ頷いて聞いてくれた。
「俺のは？」
鼻歌まじりにBIGBANGの曲を聴いてると
ジヨンが不意にそう尋ねた。
「え？」
「曲。…BIGBANGとヨンベのしか聴いてないの？」
疑うような瞳でジヨンがそう尋ねる。
「まさか(笑)
ジヨンのは…Missing youが好き。」
「言わせた感ない？(笑)」
呆れたように笑ったジヨンがそう自嘲する。
「そんなことないよ(笑)
本当に好きなの、ジヨンの書く詞が。
どの歌もジヨンの書く詞が好きなの。」
そう言うと、ジヨンはMissing youを流してくれた。
「いい曲。」
「…でしょ？」
「うん、本当に。」
ジヨンの曲も好きな曲がたくさんある。
当の本人とこんな話をして初めて、
ジヨンはG-DRAGONなんだと強く実感した。
「ここ？」
狭い路地の入り口。
ジヨンが奥を見つめてそう呟く。
「うん、そう。この奥。」
ここから先は車では入れない。
ジヨンのマンションから近いとは言えない所まで
見事に送ってもらってしまった。
「ハイ、傘。」
車の後部から傘を取り出して、ジヨンが私に差し出した。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
