雨が乾くまで。 ページ12
「…腹減ってる？」
ジヨンは黒い髪をかき上げて、そう尋ねた。
「うん。」
空腹だった。
朝から何も食べてなかったっけ。
「なんか頼も。何がいい？」
ジヨンが携帯を触りながらそう尋ねる。
「チキン？」
「オッケー。」
ジヨンはそう言うと
こちらに向けていた瞳を携帯の画面に戻した。
「…雨止まないね。」
ジヨンのそばを離れ、広い部屋を何歩か歩き、
壁一面の大きな窓に手のひらで触れてみる。
右手の温かい紅茶と、左手に感じる雨の温度。
窓を伝う雨が遠くのビル群にモザイクをかける。
「もう寒くない？」
その声に横を見ると
知らぬ間にジヨンがすぐ隣に立っていた。
そして私と同じ様に雨に濡れる街を眺める。
「うん、もう平気。…ありがとう。」
雨が降り注ぐ街から連れ出してくれたことが
なんだか今とてもありがたく思えて、
その横顔に改めてお礼を言った。
「ん。」
ジヨンは頷いて短く返事をして、
マグカップに唇をつけた。
こんな天気でも２人前のチキンは
あっという間に私たちの元に届いた。
雨の匂いは、美味しそうなその匂いに掻き消された。
「本当に言わないつもり？」
チキンのタレで赤くなった指を咥えながら
ジヨンが私を見つけてそう尋ねる。
何であんなところに立ってたの？
その質問の答えのことだとすぐに分かる。
「言わなかったら、帰れない？」
「…いてくれても別に俺は構わないけど。」
チキン食べながらジヨンがそんな冗談まで言う。
「変なの。」
「ん？」
「会うの２回目なのにそんな感じがしない。」
ジヨンの優しさのせいか
無駄に気を遣わせない空気感のせいなのか
よく分からないけどそう思った。
G-DRAGONにこんなこと言うなんて
失礼で図々しいと思われるかなと思ったけど
そう思われても別にいいかと恐れずに口に出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 212人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
