雨が乾くまで。 ページ11
バスルームを出ると
着替えが脇に置いてあった。
厚手のメンズのトレーナーと
花びらの欠けたデイジーが
裾に刺繍されたショートパンツ。
何から何まで…
親切というか、面倒見が良いというか。
G-DRAGONじゃなくて、
クォン・ジヨンの部分を知っていく。
そんな不思議な感覚を覚える。
ドライヤーで髪を乾かしリビングに戻ると
私と同じようにシャワーを浴びて服を着替えた
ジヨンがカウンターキッチンの奥にいた。
「温まった？」
ジヨンは私にそう尋ねると
マグカップ２つを手にソファに腰を下ろした。
「うん、ありがとう。」
「どういたしまして。」
ジヨンは大したことじゃないと言うかのように
さりげなくそう言うと、温かい紅茶を差し出した。
「…ありがとう。」
それを受け取って、ジヨンにまたお礼を言った。
「で、何であんなところに立ってたの？」
紅茶を一口飲んだジヨンが改まってそう尋ねる。
まだ少し濡れた髪から覗く
耳にはシルバーのピアスが光る。
答えを催促する様に
瞬きをする瞳が私を強く捉えた。
「…言いたくない。」
というより、言えない。
ジヨンには…言えない。
「言うまで、帰せないよ。」
真っ直ぐに私を見て、そう言うジヨン。
「……」
そう言うなら、帰らなくてもいいのかもしれない。
そう思ってしまうのは、ジヨンの瞳と声のせいだ。
「…黙んないでよ(笑)」
なんとも言わない私に
ジヨンが少しふざけた様に困った顔をするけど、
うまく返せる言葉がまだ見つからなくて、
私はまた沈黙を続けた。
「ま、いーや。時間はあるし。」
そう呟くジヨンの声と遠くで動く洗濯機の音が聞こえる。
雨水に濡れた服が綺麗に洗われて乾くまで。
ジヨンと私にある時間。
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作者名：carly
| 作成日時：2021年2月5日 20時
