ふたりきり。 ページ18
Aとふたりきりになれるところ。
こんな狭い車の中じゃなくて、
助手席と運転席の距離よりも近づけるところ。
広いソウルの街の中にも、そんな場所は多くない。
助手席座るAの顔を見ることは出来なくて、
さっきの失態を出来るだけ思い出さないように
平常心を保って、ただただ前を見つめた。
散々考えて向かった先は、結局俺の別宅。
車を降りて、Aを家の中に招いた。
玄関の扉を開けてAを通す。
「お邪魔します…」
靴を脱いだAを先導するように、
「上までついて来て。」
階段を上がった。
２階からさらに階段を登り、屋上に続く扉を開けた。
「わー…！」
Aはそう声を上げて、
植物鉢の内側に備え付けられた柵に手をついた。
「いいでしょ。」
涼しい風と、どこからか香る薄い花の香りが
俺とAの間を通り抜ける。
漢江とその向こうのビル群がよく見える。
見渡せば南山タワーさえも小さく視界に映る。
住宅街は閑静で、ただ風の音が聞こえている。
「こんな素敵なルーフトップがあったんですね。」
微笑んだAがそう呟いた。
「うん、これが気に入って選んだ家だからね。」
ここからの景色が好きで、別宅としてここを買った。
ビルに囲まれた空なんかじゃなくて、
視界いっぱいに広がる空が見えるルーフトップ。
遠くを見つめるAの横顔。
静かな時間。
「…追いかけずに、パリに行ってごめん。」
沈黙を破るようにそう呟いた。
「…いいえ。
私の方こそ、ごめんなさい。
突然、帰ったりして。」
少し俯いたAが気まずそうに、そう言った。
「ずっと考えてた、Aのこと。」
既読にならないメッセージ。
確かに聞こえたAの言葉。
一人スタジオを出て行ったAの後ろ姿。
そんなことを思い返していた。
「そういうの…困ります…」
眉を潜めたAが小さな声で呟いた。
「…え？」
しっかり聞こえていたのに、
Aの言葉を聞き返す言葉しか出てこなかった。
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愛嬌(プロフ) - いつもどの作品も大好きです。今回の作品特に大好きです。続編期待したいです^_^ (2021年3月9日 21時) (
レス) id: dff3957b28 (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - いつも楽しく読まさせて頂いてます。有難うございますぜひこの一緒に暮らした後も見てみたいと思いました！ (2021年2月26日 20時) (レス) id: 93edf5acd5 (このIDを非表示/違反報告)
carly(プロフ) - さあとさん» お読みいただき、ありがとうございました！そう言ってもらえてとても嬉しいです！引き続きジヨンさんのお話を書いていこうと思いますのでよろしくお願いします(^^) (2021年2月8日 22時) (レス) id: 7bb2fdde44 (このIDを非表示/違反報告)
さあと(プロフ) - 楽しいお話読ませて頂きありがとうございます(^o^)ほっこりしました。のんびりとしたゆったりとした、二人の雰囲気良かったです。次のお話も楽しみにしています(^^) (2021年2月6日 18時) (レス) id: ec1f7b1c32 (このIDを非表示/違反報告)
carly(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます！会いたくなっちゃいますよね…(笑)きっともうすぐ姿を見せてくれるはず！そう思ってもう少し待ちましょう…(笑)引き続きどうぞよろしくお願いします！ (2021年2月5日 20時) (レス) id: 7bb2fdde44 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：carly
| 作成日時：2020年9月5日 8時
