恋煩い。 ページ47
「あー……えっと。
実はAに貰ったんだよね。」
ヨンベはバツが悪そうな顔をしてそう白状する。
「…Aに？」
「Aに言わないでって言われてたのにな。
ここにくる前、食堂に寄ったんだよ。
Aも一緒に来ないかなって思って。」
「…で？」
つらつらと話し出したヨンベに、
詳細を催促するように、そう聞き返す。
「今日はまだ仕事終わらないみたいで、
俺は仕事終わるまで待とうかと思ったけど。
明日からジヨンも仕事に復帰するって話したら、
前日なのに遅くに訪ねるのは、申し訳ないって断られた。」
ヨンベはそう言って、頭を掻いた。
申し訳ないって、そんな。
そんなことないのに。
ここに来ない理由がそんな理由なら、
俺は会いたかったよ。
どれだけ遅くたってよかったのに…
「夏みかんは、ジヨンに気を遣わせたくないから、
わざわざ言わなくていいって言われてさ。」
黙ったままの俺に、そう言葉を続けるヨンベ。
「そっか。」
そう呟いて、手元の夏みかんを見つめる。
「気を遣わせる、どうこうじゃなくて、
…悪化しそうだな、恋煩い(笑)」
ヨンベはニヤッと笑ってそう言った。
「…はあ。」
不意に吐息が漏れる。
…本当だよ
俺の心をどんどん浸食するAへの気持ち。
でもそれは嫌じゃなくて。
苦しいけど、愛おしくもあるそんな感覚。
これが恋煩い？
今までの俺は１人でいるのも退屈だから、
気に入る人がいれば、付き合って、
恋人らしいことして、時間が経てば別れて。
それの繰り返しだった。
それが恋だと思って疑わなかったし、
大したもんじゃないって思ってた。
今まで何度も"恋"はしてきたはずなのに、
そのどれとも違うAへの気持ち。
さて、どうしようか？
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作者名：carly
| 作成日時：2020年7月19日 18時
