届かなかった祈り。 ページ30
ヨンベさんの話は、
私が想像していたよりも
はるかに、酷いものだった。
ジヨンさんの恋人がドラッグをやっていたこと。
過去に、ジヨンさんが
ドラッグ関連の事件に巻き込まれたことは、
ファンである私も、よく知っていた。
当時は、大々的に報じられていたから。
それ以来、ジヨンさんはそういったことに
人一倍、敏感で、センシティブで、厳しくて
それを理由に、恋人とは別れたこと。
そして、お酒を大量に飲んで、
急性アルコール中毒で病院に運ばれたこと。
元々、疲労が原因で弱っていた身体には
その負担は、相当大きかったようだ。
「それでもさ、会社は１週間の休暇しかやれないって。
デビューしてから今までで、一番ジヨンが参ってるのにさ。」
ため息混じりに、
呆れたような声でヨンベさんはそう言った。
辛い夜にならないように。
そう祈った私の願いは届かなかったんだ。
ヨンベさんが話す、あの夜の出来事が
あまりにショックで、私は何も言えなかった。
「…で、今日が３日目。
昨日様子見に行ったんだけど、全然良くなってなくて。
Aが顔を見せに来てくれたら、ジヨンの様子も、
少しは良くなるんじゃないかって誘ったわけ。」
助手席の私をちらっと見て、ヨンベさんはそう言った。
「…私にそんな力ないですよ。
私が行ったら、嫌がると思います…」
アフターパーティーのジヨンさんを思い出せば、
そう思うのが、当然だろう。
あれ以来、ジヨンさんから連絡はなかった。
黙ってアフターパーティーに行くなんて、
ジヨンさんの気に触ったんだろうと思ってた。
「そんなことないよ。とりあえず会ってやってよ。
俺もまだ仕事残ってるし、長居するつもりはないからさ。」
ヨンベさんはそう言って、私を乗せたまま、車を走らせた。
車が停まった先は、とても大きな家の前だった。
モダンでお洒落な造りで、
入り口がどこか分からないような建物。
ヨンベさんの後ろについて、その建物に入る。
外からは分からなかったけど、
中には小さな中庭があって、とても静かだった。
無用心なことに、庭の先の玄関の扉は開いていて、
ヨンベさんは、慣れた様子で中に入った。
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作者名：carly
| 作成日時：2020年7月19日 18時
