No.141 ページ5
「……八百万」汗をかきながら目配せをしてくる泡瀬。隙があれば直ぐ逃げると目が言っている。
(……分かってますわ)
同意を表すためにこくりと頷く。不利的状況。このヴィランが隙を見せてくれるとも思わないが……。
(この人、誰かを探している。……)
今の口ぶりからしてこの女には誰かターゲットがいるようだ。そしてその特定の人物以外殺す気はない。ハッタリという可能性もあるが、何となく嘘ではないという感じがしている。無論、油断はできないが。
「あ、そろそろお暇しなくちゃ」不意に本来の目的を思い出したらしく、女は手を叩く。騒々しい物音が聞こえてくる森の遠くからは、煙幕が上がっている。
背を向けて歩き出す女の後ろ姿を、八百万は警戒しながら見ていた。
だが、不意に彼女は歩きを辞め、後ろを振り返った。さっきとは一転、とても楽しそうに、それでいて狂った笑みを女は浮かべていた。
突然の変化に怯んだ矢先、瞬きをする前には離れた距離にいた彼女が、急に真横に現れた。そのことにたじろぐことすら出来ず、冷や汗が頬を伝う。
背筋が凍りつく。何も言葉を発することができなくなった八百万の耳元で、そのヴィランは小さく呟く。
「いつも、ありがとう」
(……え？)
意味不明な言葉を吐かれ、頭が放心状態になる。気づけば女は遠ざかった場所にいて、八百万はただ呆然とその光景を見ることしかできなかった。
「八百万⁉︎ 何もされてねェか⁉︎」
完全に姿が見えなくなったのを確認してから、泡瀬が直様近寄ってくる。女がいった最後の台詞は聞こえなかったようだ。
「……ええ。問題ありませんわ」
何とか返事を返す。また辺りに注意を配りながらも森を歩くのを再開する。だが、嵐が過ぎ去ったという安堵感よりも、釈然としない気持ちの方が優っていた。いきなり囁かれた言葉が、耳の鼓膜の中で蠢く。
『いつも、ありがとう』
(どういうことですの……)
混乱する頭の中。
横目に見えたガーネットを嵌め込んだような瞳が、脳裏から離れない。
——どうしようもなく気になって来た道を振り返ると、そこには一羽の黒い蝶が羽ばたいていた。
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スノウ(プロフ) - このシリーズ大好きです!!!!!続き待ってます!! (9月20日 21時) (
レス) id: d0ec094424 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - すごく面白くて好きです！続きが楽しみすぎて頭が破裂しそうです！これからも無理せず更新頑張って下さい！応援してます！ (9月4日 22時) (レス) @page11 id: 99cadfaa21 (このIDを非表示/違反報告)
Ray@二次元LOVE(プロフ) - キーパーソン(key person)がキーバーソンになってます (7月3日 1時) (レス) @page10 id: 0909fd7c4f (このIDを非表示/違反報告)
猫 - みんなが金子さん？！って言ってるのかわよす (7月2日 22時) (レス) @page10 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)
( ･´ｰ･｀)どやｗ(プロフ) - 続編おめでとうございます！もう最初から見てるんで涙がほろりと出てきそうです(笑)反応が遅れてしまったことが兎に角悔しいです…。まだ此の作品が見れるのだと思うとワクワクです。ワクワクさん(笑)と、ところで瑞樹さん……金子ちゃんグッズはまだですか？！← (6月4日 10時) (レス) id: 4e2cb1d965 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑞樹 | 作成日時：2023年6月3日 21時
