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__…ら、ん……かわ…ら、さん
ん…僕の名前が呼ばれてる?
「河村さん!なんで泊まってるんですか!」
あー、やっぱり怒られた。
あれ、でもこの声は福良じゃないな…
「…こうちゃん?」
「はい…なんで泊まってるんです?この前福良さんにダメって言われてたじゃん」
「出社、早くない?」
こうちゃんの問いかけは無視して逆に質問で返す。
窓の外はまだ薄暗い。
「昨日やり切れなかった仕事があるから来たんです」
…そうだったっけ。その割には普通に定時で上がっただろ。
「珍しいですね。泊まり込みで仕事じゃなくて、寝てるなんて」
「…僕だって睡眠欲くらいある」
「何かあったんですか?」
「…ちょっとね、好きな人が振り向いてもらえないものだから」
「…奇遇ですね。俺の思い人も、なかなかこっちを見てくれません」
「へぇ、それは興味あるね」
とは言いつつ、もう一度目を閉じる。
何だか、まだ目覚めたくない。
「ねぇ、河村さん」
不意に、頭に載せられた何か。
こうちゃんの、手だとわかったのは僕の癖っ毛が優しくなでられたせいだった。
「…こうちゃん?」
少し驚いて寝返りを打つ。
窓からは朝日が漏れていて、こうちゃんの表情をやさしく照らしていた。
「…こぉ、ちゃん?」
寝起きで声がかすれる。
優しい笑顔を浮かべたまま、こうちゃんは軽く吹き出した。
「…こっち、向きましたね」
「…う、ん?」
____俺の思い人も、こっちを向いてくれません
そう、言ってたか?
「…仕事があるなんて、嘘なんですよ」
「…へ?」
「昨日の夜のこと、山本さんから聞いて」
「ずっと相談してたんです。山本さんに」
「だから、行ってあげてって」
相談?山本に?
行ってあげて?
なんでこうちゃんが。
「俺、河村さんが好きなんです」
「え…僕?」
「そうです。ずっと片思いしてた人が失恋したっていうから」
「ふふ、性格悪いですよね。笑っていいですよ」
「…いや、気持ちは分かるよ。僕も何度奪いたくなったか知れない」
「それはどうも。でも、もう河村さんには山本さんじゃなくて、俺を見てほしいんですよ」
こうちゃんは僕の頭を触っていた手を少し下におろし、前髪をかき分けた。
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Azusa(プロフ) - morさん» そうですね!私も創作意欲を失った訳では全く無いので少し落ち着いたら長編とかも書いてみようと思ってます(^-^)最後まで読んでくださりありがとうございました! (2021年1月13日 2時) (レス) id: 1e11c41067 (このIDを非表示/違反報告)
mor - 更新お疲れ様でした!再開される時まで待ってます!その時はizym長編とか最後のizymの続きとか読みたいです! (2021年1月1日 20時) (レス) id: 06bc4acfa5 (このIDを非表示/違反報告)
Azusa(プロフ) - 緋歌梨さん» 本当ですね…治しておきました。わざわざ教えていただいてありがとうございます…!! (2020年11月29日 21時) (レス) id: 1e11c41067 (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - 19ページの9行目みんなには言ったのかじゃないですか? (2020年11月29日 20時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
Azusa(プロフ) - ゆゆーさん» 可愛いシチュのお陰です笑 リクエストありがとうございました! (2020年11月14日 17時) (レス) id: 1e11c41067 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Azusa | 作成日時:2020年9月13日 21時