中間テスト ページ10
中間テストがスタートした。
先生たちは事前に配られた監督表通りに動く。
テスト初日の一限目、自分が担当している教科のテスト。
時間を見計らって担当クラスを順番に回って行き、質問を受け付けるだけ。
私は生徒たちがどれくらい解けているかをさっと答案用紙を確認する。
佐久間くんの答案をチラッと見ると、結構回答欄が埋められていた。
勉強が得意ではない佐久間くんのことを去年から知っている私は、放課後に岩本くんと頑張ってたもんなぁとちょっと嬉しくなった。
二限目は自分のクラスの試験監督。
数学のテストを持って自分のクラスに行く。
教室では生徒たちが最後の悪あがきとして教科書やノートを開いていて、佐久間くんも阿部くんに何やら教えてもらっていた。
阿部くんは学年一位の成績の持ち主で、ウチのクラスの学級委員もしてくれている。
とてもしっかり者の良い子。
「チャイムなるからテストの準備してね！机の上は筆記用具だけにして！！」
チャイムが鳴る3分くらい前に私がそう声を掛けると、みんな自分の席に戻り、教科書をカバンにしまったり、筆記用具の確認をしたりする。
チャイムと同時にテストを配布し、そのあとはじっと生徒の様子を見ながら50分間立っているだけ。
数学は苦手な生徒が多いから、ある程度時間が経つと机に伏せて寝てしまう子も多い。
そんな中、阿部くんは真剣な顔で回答用紙にシャーペンを走らせている。
半分くらいの生徒が机に伏せている状況で、意外にも佐久間くんは起きている。
回答用紙に何かを書き入れてはそれを消し、うーんと唸る声が聞こえてきそうな顔をしている。
そして、あ！っと何かを閃いたような顔になったかと思えばまたうーんと難しい顔に。
百面相じゃん。
私は心の中でつい笑ってしまう。
すると、パッと視線を上げた佐久間くんと目が合う。
“ す き ”
テスト中だからか真剣な顔のまま、口パクで伝えてくる佐久間くん。
え、すき？今の、すき、だったよね？
私はドキリと跳ねた心臓を押さえつつ、佐久間くんから目を逸らす。
チラリと様子を伺うと、佐久間くんはしてやったりの顔。
私はほとんどの生徒が寝るかテスト用紙しか見ていないのを確認して、もう一度目が合った佐久間くんにやり返す。
“ お ば か ”
すると少し目を見開いてから、ニヤニヤし始める佐久間くん。
手を口元に持っていき、にやけるのを堪えようとしているみたいだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柊李 | 作成日時：2021年11月7日 22時
