答案用紙 ページ13
昼食から戻り、テストの採点を始めようとコーヒーを入れる。
みんなそこそこだなぁと思いながら採点を進め、佐久間くんの答案の番。
とりあえず正解のところの丸つけをして、点数を計算する。
42点
「ダメダメじゃん。」
ウチの学校の赤点ラインは40点なので、本当にギリギリだ。
コーヒーを一口含み、そのまま佐久間くんの答案用紙を眺める。
本人が言っていた通り、わからなかった問題の回答欄には私の好きなところが書いてある。
《可愛いところ。》
《ちょっとドジなところ。》
《笑顔がすてきなところ。》
《優しいところ。》
《俺たち生徒の目線に立ってくれるところ。》
《同じ温度で話してくれるところ。》
《ちゃんと生徒のことを見てくれるところ。》
恥ずかしいな、照れちゃうな、ということがたくさん書いてある答案用紙の最後には、《先生についてのテストならもっと勉強します。》と書かれていた。
「もぅ…佐久間くんったら…本当にお馬鹿なんだから…。」
ついそう言葉にしてしまう。
大「なになに？先生俺がどうかした！？」
「な！？なんでいるの！！？」
もう帰ったはずの佐久間くんが後ろに立っていた。
「っていうか！今テスト期間だから職員室入室禁止！！」
大「だって忘れ物して取りに来たら教室鍵閉まってるし、さっきから何度も呼んだけど先生気付いてくんなかったからさ…。」
そう言って少しむくれる佐久間くん。
周りを見るとちょうど他の先生たちも出払っていて、だから誰も止めなかったのかと納得した。
「はい、教室の鍵。」
そう言って教室の鍵を渡して、佐久間くんの背中を押して職員室から出す。
大「俺のテスト見た？」
いつものニコニコ顔で聞いてくる。
「見たよ。テストにあんなこと書いちゃダメでしょ？」
大「えー、だってわかんなかったんだもん！難しかった！でも、本当に思ってることだからね？」
「はいはい、ありがと。ほら、忘れ物取ってきな？」
大「はーい。」
そう言って教室に向かう佐久間くんが見えなくなって、私は職員室に戻る。
今誰もいないし…と思って佐久間くんの答案用紙をコピーする。
おバカだけど、こんなに好意を伝えられるのは素直に嬉しいから、記念にとっておくために。
数分して、鍵を返しに来た佐久間くんをまた見送って、私は採点を再開した。
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作者名：柊李 | 作成日時：2021年11月7日 22時
