Another World (ページ7)

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新しい世界には新しい出会いがある。
ご飯にさそってくれる人もいる。ごちそうしてくれて、話聞いてくれて、優しい人だと思う。次はサッカー観に行こうよってさそってくれてもいる。

楽しくないわけじゃない。
ただ一生懸命教えてくれるお酒のウンチクについていけなかっただけ。

嫌いなわけでもない。
あぁ次もあるんだ…ってちょっと気分が乗らないような気がしただけで。

でも彼だったら…？
バーで教えてくれたお酒のこと、私は目を輝かせて聞いていた。

どこいく？
その言葉がなによりうれしかったのに。

好きは、最強なんだ。なによりも強くて。
辛くても、悔しくても、傷ついても、投げ出してやりたくなっても、好きだから結局は許せるし頑張れる。興味のないことでも、聞いていたくなる。

好きになったら、自分の限界や当たり前を超えるんだって。

…だからやっぱりわたしは好きじゃない。
彼以上のひとに出会ったわけじゃない、ってこと。

・

かなり少なくなったものの、やっぱり何回かは夢にでてくる彼。頭と心の片隅に存在する彼は少し小さくなってきたような気がする。

だんだん新しい環境にも慣れてきて最近は少し楽しい。新しくできた友達と映画に行ったり、みんなでバーベキューをしたり。充実してるからかな。

でもそれはある日とつぜんやってくるからどうしようもない。

・
いつものように7階の教室からみんなで話しながらおりてくる。わたしたちがいるのは大きなキャンパスの1番はしっこの校舎。門から1番遠いから見学者でさえめったにこない。

…なのに

「…なんで…」

小さな花壇のそばに懐かしい影があった。

「A。」

名前を呼んで笑顔をみせたのは、ずっと忘れられなかった彼で。

涙で視界が滲むのを感じながらそっとかけよった。

目の前にいる彼は夢じゃなくて確かにここにいた。
信じられなくて彼の着ていた服を両手で握りしめると、大きな涙の粒が溢れ落ちた。

「…会いたかった。ずっと会いたかったよ…」

想いが溢れ出して止まらなくなってやっぱり好きだと気づく。

「うん。だから会いにきた」

そう言ってわたしの涙を拭ってから
頭を優しく撫でた彼は、なにも変わっていなくて
ホッとした。

・
近くの公園で話しながら歩く

なんで会いにきてくれたの？
そう聞くと

昨日第一希望の会社に内定を貰ったんだ、
決まったら大事な人、迎えにいこうって決めてたから。

そう言って照れ臭そうに笑った彼を私はきっとずっと忘れない。