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Aside
お腹がいっぱいになった後の洗い物ほど面倒なものはない
キャンプの食事は楽しいが､汚れた食器や調理器具を少し離れた洗い場まで持って行くのもひと苦労だ
先に食器洗いを終えて戻っていく別グループの生徒たちとすれ違った
大きな鍋や調理器具を持っていた私はよろけて柵に寄りかかってしまった
A｢おっも…あっ…｣
その時に後ろから来た隼人が私の手から洗い物をひょいと持ち上げた
有馬｢なに1人でやってんだよ…アホかよ｣
そういうとスタスタと洗い場に入って行った
A｢え…ちょっと…！｣
でもほっとけなくて来てくれたんだ…
一旦他人に関心がないように見えるが…実はめちゃくちゃびっくりするくらいちゃんと人を見てる
私たちの班は食べはじめたのが遅すぎてさっきまで混雑していたはずの洗い場はもう私たち以外の人はいなかった
だからってなにもすることもなく並んで洗い始める
炭で真っ黒になった鍋を怒ったようにタワシでごしごしこすっていた隼人がふと手をとめ､鍋で食器を洗ってる私にいった
有馬｢カレー…まあまあだったな｣
A｢え､食べたの！？｣
麻友からの差し入れではなく？
有馬｢でも少し甘すぎ｣
でも…食べてくれたんだ…
高級スーパーのムール貝より激安業務スーパーの豚肉を…
色とりどりのレモンを添えたおしゃれな一品より福神漬けを添えた茶色一色の庶民の一品を…
すっかりご機嫌になっていると､髪を束ねていた虹色のりぼんがするりとほどけて流し台に落っこちた
すぐに拾い上げたが､びしょびしょだ
A｢あ〜あ｣
有馬｢どうすんだよそれ｣
A｢大丈夫…すぐ乾くから｣
絞って天板におき､洗い物を続ける
A｢ん〜邪魔…｣
両手が濡れているのでいちいち顔を振り上げて髪を払っていると…鍋を洗い終えた隼人が何故か私の背後に立った
A｢…え｣
私の髪をうなじのところでそっと束ねて持ち上げてくれている
有馬｢持っててやるから早く洗え｣
え…むり…まって心臓もたないって
A｢でも…この体制…へん…｣
精一杯平然を装っていう
有馬｢いーから｣
ぶっきらぼうだけど私の髪をひっぱらないように大きな手で優しく包み込むようにして持ってくれている
こういうギャップにやられちゃうんだってば…
A｢…うん｣
尊死案件でしょこれ
よかったぁ…ほてった顔を見られなくて…
洗い物を再開したけど汚れが本当に落ちたかどうか
身体中の神経が全部うなじに集中してたみたいだった…
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作者名：あやっち | 作成日時：2022年12月22日 17時
