私のこと､好きになってよ…〜胸が鳴るのは君のせい〜 (ページ9)

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Aside

野外活動といえば飯盒炊さん､飯盒炊さんといえばカレーと相場が決まっている

宿舎に荷物を置くと､生徒たちはすぐ炊事棟に集合して夕食作りに取り掛かった

みどり｢いただきま〜す｣

調理を終えたみどりと弥生の班は､早くもカレーを食べ始めている

私たちの班は､まだ炒めた具を煮込んでいる段階だ

同じ班の高岡と金子のはらぺこ男子ペアがさっきからテーブルでぶーぶー文句を言っている

高岡｢はらへった〜｣

金子｢まだかよ〜｣

有馬を加えた3人は火起こしと炊飯担当で､すでに仕事を終えていた

調理担当は私とつかさともう1人の男子なのだが…運悪く不器用な2人に地味にこだわり深い私が揃ってしまって全く進まない

A｢もうすぐできるから！｣

玉ねぎが飴色になるまで炒めていたら遅くなったマジごめん

高岡｢もうすぐできるからってあと何秒〜？｣

空腹がピークに達した高岡は､餓死寸前というてい

隼人だけはジャージ姿で必死に格闘している私を遠目に見て微笑んでいたらしい

麻友｢隼人くん｣

不意に､隼人の後ろから声がした

白い三角巾にフリルのエプロンをつけた麻友が､平たい鉄の鍋を持って立っている

同じ格好の友人2人も一緒だ

有馬｢麻友…｣

隼人は1年ぶりにその名前を口にした

麻友｢よかったら…これ食べて｣

麻友は少し鍋を掲げてニコッと笑った

友人が鍋の蓋を開ける

麻友｢作りすぎちゃったの､よかったらみなさんで｣

なんと､ムール貝や海老など豪華な食材がふんだんに使われているパエリアだった

高岡｢え！？いいんですか？｣

金子｢マジすか？｣

高岡と金子は一も二もなく食いついた

皿だけが並んだテーブルの上に麻友が笑顔で

麻友｢どうぞ｣

とパエリアの入った鍋を置く

高岡｢わ〜うまそ〜！｣

金子｢いっただっきまーす！｣

2人は歓声をあげてがっつくように食べ始めた

高岡｢うま！めちゃくちゃ美味いよこれ！｣

麻友｢ふふっ…じゃあね｣

麻友は隼人に微笑んで自分の炊事棟に戻って行った

そこへ私たちようやく出来上がった渾身のカレーを持って現れた

A｢お待たせ〜！…え？｣

パエリアを口いっぱいに頬張ったまま高岡達が固まる

あれだけ文句を言った手前流石に後ろめたいらしい

しかも歴然とした料理の格差よ…

みんながお腹を空かせてると思ってたくさん作ったポークカレーがむなしかった…