吸血姫は眠りを知らない3 ページ4
「シュウ、そんな所で何してるの?」
「...姉様」
屋敷の庭から外を眺めるシュウにそこを通り掛かったAは声をかける。
声に気付きこちらを振り返るシュウの表情にいつものような笑顔は見えない。
「ねえ、姉様」
「ん?なぁに?」
「どうして僕は外に出ては行けないんだろ」
「じいやとばあやに言われたの?」
こくりと頷くシュウの曇った顔をAは自身の腕で包んだ。
「ふふっ、硬いね」
「おいこら、しばくぞ」
そりゃあベアトリクス様に比べたら私のお胸なんが絶壁だろうけど、年齢の割に出てるって言われるんだよ?不貞腐れながらも、シュウからいつもの笑顔を引き出せた事に満足したAはシュウの額にキスを落とした。
「愛してる、私の可愛い弟」
「...姉様っていつもそうだよね」
「ん?何が?」
「何でもない」
そっぽを向いたシュウの顔を追いかけるようにして下から覗くと、シュウの小さな手がAの額に触れる。目を丸くするAに追い討ちをかけるように額に柔らかいものが触れた。
「僕も愛してるよ。“姉様”」
そう言い残して去っていったシュウに返事をすることも出来ず放心していたAは、シュウの感覚を確かめるかのように額に自身の手を当てる。
「シュウからの初キッス!いっけない、こんなことしてる場合じゃない!お赤飯炊かなきゃ!」
そう言いながら、キッチンへ向かうAを目で追おう人物の影が一つ。
「シュウは僕から母様を奪うだけでは飽き足らず、姉様まで奪うのですね」
風の切る音で掻き消えてしまいそうな小声で、それでいて芯のある声で呟く。己の近くに立っている木に自身の爪をくい込ませると、吐き捨てるように言葉を紡いだ。
「約立たずのくせに、何故愛されるのがあいつなのです」
▲▽▲
赤飯の炊きあがりを待つ間本でも読もうかと本棚を見る。そこには『アダムとイブ』の絵本があった。そういえば、お父様が異様にこの本に執着してたな。
「あれ?ライト」
本を手に取ろうとした時、窓の隙間からライトの赤みがかった髪が見えた。
髪のなびき具合から部屋の前を通っただけということが分かる。アヤトとライトの髪色は似てるけど、例え見た時間がたったの2秒14だけだとしても、私が可愛い弟の髪色を間違えるはずがない。
「それに、あの臭い」
Aはライトの匂いと共に漂ってきたコーデリアの強い臭いと、明らかな情事の臭いに顔を顰めた。あのクソビッチは自分の息子に何させてやがんだ。
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もこ(プロフ) - 初コメ失礼しますね!私逆ハー大好物なので嬉しいです!ディアラバのキャラ全員推しなので嬉しいです!更新頑張ってくださいね! (2023年4月17日 21時) (レス) @page7 id: 3b02df20c8 (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - 続きが気になります!更新楽しみにしてます! (2021年2月13日 3時) (レス) id: 2d9e53b3e9 (このIDを非表示/違反報告)
*SSU* - つ・づ・き・が・た・の・し・み♪ (2020年4月28日 10時) (レス) id: b6be28c7e2 (このIDを非表示/違反報告)
まゆた - つづき楽しみにしてます! (2020年3月8日 10時) (レス) id: 6c85c6c733 (このIDを非表示/違反報告)
神 - わぁー! 返信ありがとうございます。応援しています! (2019年10月10日 21時) (レス) id: 090390c6c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜蘭 | 作成日時:2019年5月15日 19時