赤羽業の時間 ページ3
それから数週間後の体育の時間。もう授業も終わるかと言う頃に、その人は来た。
「カルマ君……帰って来たんだ」
「よー。渚君久しぶり」
うっすらと笑って挨拶をし、飄々と歩いてくるのは赤羽業。たしか、成績はいいのに授業態度やが学外での素行がよろしくなくてE組に落ちた人。
「赤羽業君……ですね。今日が停学明けと聞いていました。初日から遅刻はいけませんねぇ」
「あはは。生活リズム戻らなくて。下の名前で呼んでよ。とりあえずよろしく先生！！」
そう言って手を差し出す姿に少し違和感を覚える。この人は、こんな喋り方をする人なのか？何処と無くわざとらしさを含んだ声色に眉を顰めながら、どう動くのか見守るため視線はずらさずに見つめる。
「こちらこそ、楽しい1年にしましょう」
握手した、と思ったら、先生の触手が溶ける。みんなが驚いた隙にナイフで第二の攻撃を仕掛けるも、さすがマッハ20。あっという間に間合いを引き離した。けど、誰も口を開けなかった。初日にして先生にダメージを与えた生徒は初めてだった。もしかしたら、防衛省の中でもダメージを与えた人はいなかったかもしれない。それを、この生徒はいとも容易くやってのけた。
「殺せないから『殺せんせー』って聞いてたけど。あッれェせんせーひょっとしてチョロイひと？」
今までと全く違う口調。けれど、それは今日聞いた中で一番しっくりきて、彼の素がこちらだと知らされる。
その次の時間も、彼は暗殺を仕掛けダメージを負わせていく。その姿に、『今この場では優等生かもしれない』と言う先ほど渚君の言っていた言葉がリフレインされる。
「ここでは優等生、か」
「ん？どうした、青柳さん？」
「いや、何でもない」
思わず口に出していたらしい。首を緩く振って否定すれば、すぐに興味を無くしたらしく赤羽君は足をすすめて校舎から出て行った。本格的な暗殺は、明日やるようだ。意識を彼から授業へと向け、今日最後の授業を受けた。
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作成日時：2020年10月11日 0時
