・ ページ5
｢え？｣
｢皆さんも知っているでしょう、あの子に関わると不幸なことがあるって。｣
｢はい。｣
｢……最初はそんなこと信じてなんか無かったの。確かに喋らなくて少し変な子だとは思っていたけどそれぐらいだった。
でも少しして本格的にその噂が広がり始めて、住民の方から色んな証言を聞くようになった。半信半疑になっていったわ。
そんな時にあの子は現れた。
私が子供と遊びに出かけている時だったわ。彼を見て少し気味が悪くなったけど、特に気にせず子供が走り出した瞬間に車が突っ込んできたの。 ｣
｢…………そうですか……｣
｢……本当はもっとあの子を守ってあげなきゃいけなかったって分かってたの。
……でも、そんなことがあって出来なかった。｣
話しながら涙を流す女性に慌てて｢すみません、大丈夫ですか。｣と声をかける。
───報告書読んだ時は酷い村人達だなって思ってましたけど、全員が全員そういう訳ではないみたいですね───
カズの声が頭に響く。
どの村人もそうなのだろう、最初はそんなこと思ってなかったけど、実際に被害を受けてから信じざるを得なくなった。
｢ごめんなさい、こんな姿を見せちゃって。｣
と涙を拭く女性は、
｢幽霊のこと、お願いしますね。｣
と言うと、足早に去っていった。
中々重たい話を聞いて何となく感傷モードに浸っていると、
｢それにしても、幽霊ってお昼にも出るんだね。｣
とマサキが言った。
｢そこですか、マサキ。｣
さっきの話をどう聞いていたらそこが気になるのか分からず、カズも呆れたように呟く。
｢……確かに今まで聞き込みをしていた人はタクトくんに会うことで何らかの被害を受けてるけど、タクトくんが居たからその事件が起きたって考えるのは……早くない？｣
｢あなた、話が支離滅裂すぎますね。｣
幽霊ってお昼にも出るんだね〜なんてぼんやり言っていたマサキが、今度は急に真剣な顔になって疑問をなげかけてくる。
｢…………まぁ、確かにさっきの話も、あの女の人のお子さんが飛び出したことが事件の元だからね。｣
｢コケたとかそういう小さな話もまぁ、あまり関係ないような気はしますね。｣
俺とカズが口々に言うと、賛同が得られたのが嬉しいのかマサキが｢でしょ！｣とぴょんぴょんと飛び跳ねた。
｢とりあえず粗方聞き込みは終わったし、向こうの2人とも合流してご飯食べながら相談するか。｣
と夕暮れに3人歩き出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kar | 作成日時：2022年9月2日 23時
