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｢……手話？｣
｢えぇ。タクくんは耳が聞こえないんです。だからいつも手話を使って会話をしていたんですけど……皆さんも気づかなかったようですね。｣
そう言ってリンさんが少しだけ寂しそうに笑った。
｢……でも危険って？｣
｢…私にもよく分かりませんが、タクくんは“予知能力”を持っていたんだと思います。だから………
何か悪いことが起こると視えた時にその人に警告しに行っていたんです。｣
｢……じゃあ……タクトくんが能力で人々に危害を加えていたのではなく
……能力で救おうとしていたってことですか。｣
衝撃の事実に声を落としながら聞くと、
｢はい。タクくんはとっても優しい男の子でしたからね。｣
とリンさんがゆっくり頷いた。
｢でもタクトくんは喋れなかったし、手話を知っている人も居なかった。……だから上手く情報が伝達されずに良くない噂が広まってしまったという訳ですね。｣
カズが纏めるように言うと、皆それぞれ悲しそうに下を向いた。
｢…………私がタクくんの言っていることを伝えることが出来れば良かったんですけど、親に“あの子とは関わるな”と言われていてなかなか会うことが出来なかったんです。｣
少しの沈黙の後、ゆっくりと言葉を零し始めたリンさんに心が痛む。
あんな噂が立ってしまえば、親がそう言うことも分からない訳では無い。
｢……じゃあ、そうやって勘違いが広まっていってしまったから……タクトくんは苦しくなって……あの事件が起きちゃったってこと？…………そんなの可哀想だよ…｣
とマサキが顔を下に向けて悲痛な声を漏らすと、
｢いいえ。｣
とリンさんがはっきりとした声で返す。
｢…………タクくんは……自分で川に飛び込んだんじゃないしそんな筈ないんです…………だってあの日……
“私とタクくんは河原で2人で会う予定だったんですから”｣
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作者名：Kar | 作成日時：2022年9月2日 23時
