苦手だけど憎めない水上くん

ふくらさん ページ20

「へぇ…ここがクイズノックのオフィスですか…」



伊沢「うん、意外とこんなところにあるんだよ」



「あ、傘ありがとうございます」



いえいえ、と言いながら伊沢さんは傘を閉じた。




外は土砂降り。やっぱり伊沢さんの傘にいれてもらって正解だった。




伊沢さんの肩を見るとぐっしょりぬれていた。








「い、伊沢さん…肩濡れてます、ごめんなさいわたしぬれてなくて。」






きっと私の方に傘を傾けて、自分を犠牲にしていたんだ。





なんだか申し訳なくなった。







伊沢さんはふっと笑った。








伊沢「Aちゃんってゴメンが多いよね。






全然気にしなくていいんだよ。





僕が好きでやったことだし。」






「あ、ありがとうございます…。」








伊沢「ありがとうございますも多いよね笑笑」








いつかの誰かに言われた言葉を言われた。









伊沢「寒いから入って。中は暖かいはずだよ」








伊沢さんに言われて入ると、靴が数足おいてあった。







奥の方が作業室らしく、数人がパソコンと向かって作業していた。





伊沢「Aちゃんはこっちきて。」






誘われて行くと、そこは広く、ダイニングルームみたいなくつろげる部屋だった。






「お邪魔します…」




ふくら「こんにちは。ふくらです。

伊沢に誘われたのかな、入社希望？」



えっ。




伊沢さんの方を見ると伊沢さんはハハっと笑った。




伊沢「まあ僕はいつも誘ってますけど、今日は違います。




ここで雨宿りさせてあげましょう





例の水上の彼女。」






えっ伊沢さん






ふくら「あぁ、彼女が。




はじめまして。ふくらです。





伊沢から話は聞いてるよ。」





えっえっ


あの、









水上くんの彼女じゃないんですけどー！！









伊沢「ちょっと待ってて。




今お茶出すから。」






「いえ、おかまいなく。」








伊沢さんがどこかに消えていった。









ふくら「名前まだ聞いてなかったね。」





「あっ、下條Aです…。





水上くんの彼女ではありません。」






ふくらさんはふふふっと微笑んだ。







ふくら「伊沢はどうしても下條さんをクイズノック にいれたくて、下條さんに迷惑をかけてるところがあるかも知れないけど







それだけクイズに情熱を注いでるってことだから。




悪く思わないでね笑」







「いえ、全然…」








ふくらさんはニコッと笑った。

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