苦手だけど憎めない水上くん

ドラッグストア ページ19

「えーと、歯磨き粉と歯ブラシ…。」







大学の近くのドラッグストアは大学生が多い。





だからといって、誰かに会うことは少ない。



なぜなら私は友達が少ないから。







でも、今日は違ったみたい。





「Aちゃん。久しぶり」



「げ」



「げっていうなよ〜、がっかりするわー笑」






全然がっかりしてなさそうな伊沢さん。







「お久しぶりです。」



伊沢「お久しぶりですねー。



水上は元気？」



「伊沢さんも水上くんとよく会ってるじゃないですか。



東大王で。」





伊沢さんはん？って顔をしてそのあとニヤッとした。







伊沢「Aちゃんにはおよびませんよ。」







まあ、そりゃ私は毎日会ってるしそうかもしれない。





伊沢さんは私に会うたびにクイズノック はいらない？と誘ってくる。






それがちょっと苦手。






買い物を済ませて外に出ると









「あ、雨…。」






雨が降っていた。



パラパラならそのまま帰ろうかと思ったけれど。



割と降ってるし、傘持ってないなー。






そう思ったところに会計が終わった伊沢さんがやってきた。







伊沢「あ、雨か。





あれ、Aちゃん傘は？」








伊沢さんは手に男性用の傘を持っていた。





「今から買うところです。」






伊沢「いやいや、入りなよ。





俺はこれからオフィスだしここから近いし。





どう？」








どうって言われても…。

たしかに伊沢さんの傘に入ればお金かからないし楽だけど…


どうせそうやって言いながらクイズノック の勧誘するだろうし…。









「いや、いいです。」





伊沢「俺にカッコつけさせてよ。


この傘大きいし笑



今日はほら、勧誘してないだろ？





水上に注意されたからさ。





ね、オフィスあったかいよ。」




へえ、水上くん注意してくれたんだ…。




…優しい。



うーん、そう言われると。








「じゃあ、お言葉に甘えて。」



伊沢「よっしゃ。





１度オフィスを紹介したかったんだよね。」




「え？」




それって勧誘してません？



「紹介したかっただけで勧誘じゃなくない？」








いやいや、今のはずるいでしょ、伊沢さん。









わたしは伊沢さんの傘に入ってオフィスまで連れて行ってもらった。







水上くんからのラインが来てるとも知らずに。

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