卯月 その三 ページ20
左文字兄弟が前に出る。
「これより江雪兄様が書をしたためます」
宗三が説明すると江雪は筆を出す。小烏丸は「書か」と興味津々。
紙に書くのかと思ったが違った。
「したためるのは紙ではなく、この米粒」
『えぇ!?』
宗三の説明に周りは驚く。米粒にどうやって書くのか。
江雪は宗三から米粒を受け取ると、さらさらと細かく米粒に書く。
「できました」
薬研が顕微鏡で確認すると見事な達筆で詩が書かれていた。
薬研は思わず「詩が書かれている!」と言ってしまう。
「お小夜のために書きました」
「江雪兄様…ありがとう」
その言葉に小夜は嬉しそうだ。宗三も「良かったですね」と笑う。
「次は誰ぜよ?」
「はい!私やりたいです!」
『おぉ!』
その問いに答えたのは小通連だ。本丸の紅一点の余興に興味津々だ。
＊
「三味線をやります!」
「あの袋、三味線だったのか!」
小通連が背負っていた袋の中身は三味線だったのだ。
「三味線か。楽しみだ」
小烏丸は楽しみにしている。
「それでは一曲」
そう言って小通連は立ってやるのでストラップで三味線を支え、バチを構える。
一体なんの曲を奏でるのか。小通連は演奏を始めた。
「あ、この曲!」
「さくらさくらか!」
この季節にピッタリの曲、さくらさくらだった。その演奏はとても上手だ。
そして
べんっ
「おしまい」
『わあ』
パチパチパチ
周りは拍手喝采だ。
「ふむ。なかなか見事であった」
「小通連、雅な余興ありがとう」
「Σあれぇ!?歌仙さん泣いちゃった!?」
小烏丸はその演奏を褒め、雅を好む歌仙は涙目だ。その姿に小通連は「泣く程なのかな」と驚く。
雅を好む刀剣はあまりいないからこそ涙目なのだ。
「お主はなにかをやらないのか?」
「え!?」
小烏丸の問いに山姥切は動揺する。
「兄弟も余興やるの!?」
「では一緒にやろうぞ兄弟!!」
興味津々に来た堀川、山伏によって強引にやらされることになった。
＊
「さあさあ!では我ら国広三兄弟による余興をご覧あれ!!」
「まずは拙僧から!!」
山伏の前には１２枚重ねられた瓦。
「はああああ!!」
彼は気合を入れ瓦を全部、頭突きで割った。その姿に周りは歓声を上げる。
「次は僕ですよ!」
堀川はシルクハットを被り、杖を持つ。堀川はぐぐ…と力を入れ…
「はい!」
そう言ってシルクハットを取るのだが何も出てこない。
「?」
出てこないことに堀川は疑問符を浮かべ、杖でトントンと軽く叩くと…
バサバサ
『おお!』
真っ白なハトを一羽出したのだ。
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作者名：AYA | 作成日時：2018年1月8日 19時
