鬼一族の小太刀。参

長月　その四 ページ4

小通連の言葉に今剣は驚く。
小通連が変えられるなら変えてしまいたいって言ったからだ。
彼女の言葉に安定は理解していた。安定だけではないだろう。
実際、獅子王も「じっちゃんに会いに行くな」と言った。
陸奥守も「アドバイスの一つや二つしとうなるもんぜよ」と言った。
恐らく長谷部や宗三以外の刀剣も「できるなら…」と思っているだろう。
「うわ!!」
「岩融!?」
岩融が苦戦を強いられていることに気づいた今剣。流石に仲の良い岩融が苦しんでいる姿を見て
我に戻ったようだ。その時だ。敵が今剣に襲い掛かろうとしていたのだ。
思わず今剣は目をギュッと閉じた。……でも痛みが来なかった。
そっと目を開けてみると
「山姥切さん!」
肩を負傷した山姥切だった。すると山姥切は今剣に言った。
「過去の記憶に囚われていて倒せる相手ではない。ともに戦え、今剣」
「ともに…」
その言葉に今剣は考える。

「危ない状況だよね？」
安定の言葉に山伏は「カッカッカッ」と笑った。
「この修行、結構であるな！」
「山伏さんったら!」
「楽しそうだね。」
そんな山伏に小通連と安定は笑う。
「なぜなら拙僧…『全てを笑い飛ばせるほどに強くなりたく』!?」
小通連、安定、山姥切、岩融、石切丸が自分の口癖をあっさり言うから山伏は驚いてしまった。
「何度も聞いてるからね」
「覚えますよ」
「すべてをわらいとばせるほど、つよく。」
今剣は山伏の口癖を呟く。
「カッカッカッカッカッ。さあ、ゆくぞ！」

山伏の目つきが変わる。
「我が刃は、岩をも絶つ！」
「はははっ！俺が恐ろしいか！」
石切丸と岩融が武器を振るう。
「そ〜れ！」
刺さった槍の間を走り抜け、敵を斬る今剣。いつもの今剣に戻ってくれたようだ。


「俺を写と侮ったこと、後悔させてやる！………死をもってな!!」

いつも被っている布を払い除ける山姥切。

「拙僧も未熟であるな、今や平常心には程遠い!!」

山伏も構える。山伏、山姥切りの真剣必殺により最後の敵は倒された。
「皆の者、勝利だ!! 」
こうして時間遡行軍は倒され、厚樫山の戦いが始まった。

「この日を忘れぬぞ。」

岩融の言葉。今剣の頬に涙が伝った。

するとだ。

ぎゅっ

「小通連さん!?」

小通連が無言で今剣を抱きしめたのだ。
今剣はいきなりの事に驚いたが、自然と震える両腕を彼女の腰に回し、服をギュッと握りしめる。
そんな今剣の頭を小通連は優しく撫でた。

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