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「今日は鯖だにゃん」
「…どうしたの」
「いやちが…わないけどなんでその反応なの…」
逃げるようにキッチンに入ったときに顔が真っ赤だった。
しばらくしても出てこないから覗きに行ったら隅でしゃがみこんでいた。
髪の毛からちらりと見える耳をぎゅうと包み込んでいる。
「いのちゃん、」
「っへ、なに、ちょっとまってよあと煮物あっためなおすから…」
「耳真っ赤」
「…うるさい」
立ち上がってコンロに火をつけたいのちゃんがまた耳を押さえる。
「ねぇ、」
「…今度はなに」
「なんで俺のこと好きなの?」
ずっと疑問だった。
執着するほどの魅力が俺にあるとは思えない。
もしあの時俺に追い出されて食いっぱぐれるのが嫌だったとしても、こんなふうに俺にちょっかいをかけたり、赤くなるまで恥ずかしがったりしないはずだ、と思うのは俺の都合の良い考えだろうか。
ここで「は?あんなの信じてたのゆうと」とか言われてしまったら立ち直れないのは俺なのだけれど。
「…助けてくれたから」
「え、?」
「俺あのとき三日飯食ってなくて、うっかりしてたら雨に降られて寒いし、もう死んじゃうかもなぁって思ったらここが見えて、なんか安心しちゃって。」
火を止めて大皿に煮物を盛る。
「ここで生きるか死ぬか賭けてもいいかな、って思った」
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アーヤ(プロフ) - リアさん» 申し訳ありませんが個人的な都合で非公開にしております。これからも公開する予定はございませんのでご理解頂ければと思います。 (2020年4月1日 12時) (レス) id: befb4220c9 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - いつも更新を楽しにしています。申し訳ないのですがキスキョリを読みたいのでパスワードを教えていただくことは可能でしょうか?お手数をお掛けします。 (2020年3月31日 23時) (レス) id: 8752f9be26 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - やったー!続き待ってますね! (2018年4月10日 20時) (レス) id: ba5415a9e3 (このIDを非表示/違反報告)
アーヤ(プロフ) - みかさん» こんばんは。ありがとうございます...!私も気に入っているので書けたらいいな...と思っています。長編が二つあるのでそちらに目処がついたら考えようと思います...! (2018年4月10日 20時) (レス) id: befb4220c9 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - こんばんは。ねこねこ、面白かったです。続き読みたいです。 (2018年4月8日 20時) (レス) id: ba5415a9e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アーヤ | 作成日時:2017年4月3日 22時