シンメトリー (ページ13)

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2－1 菊池という男ページ13

優香 side

菊池が転校してきて数日。

相変わらずクラスに打ち解ける気はないらしい。

でも、……。

「菊池。ちょっとツラ貸せよ。」

このクラスは不良だらけ。

そこにやってきた、誠心の頭。

そりゃ、A以外にも喧嘩売られるよな。

そしてその度に菊池は、心底面倒くさそうな顔を毎回している。

しかし、菊池は未だに負けていない。

1度も殴られることも無く、何事も無かったようにやっつける。

さすが誠心の頭だ。強い。

こりゃAでも怪しいかもね。

「おいお前。」

噂をすれば菊池だ。

「自販機ってどこあんの？」

こいつ、名前も覚える気もないのかよ。

『校舎にはないから外行くしかないぞ。あと私は佐倉優香。お前、じゃないから。』

まじかよー、なんて大袈裟に落ち込む様子を見ると本当に強いのか分からなくなる。

踵を返そうとしている菊池を呼び止めた。

『私と一発やろうよ。』

「お前もかよーーーー。」

俺がそう告げると菊池は心底嫌な顔をした。

『アンタにとっても悪くないでしょ？いずれアンタはAとやらなきゃいけない。その前に私をやっとけば、アンタは梶木の2番になれる。』

「別に頭とか興味ねぇよ。」

『えっ？』

菊池の返答が予想外だった。

だってこいつは誠心時代、1つ上の頭だった木石を倒して頭になったんだ。

てっきり、頭になりたかったんだと思ってた。

『じゃあ、なんで頭に成り上がったの。』

ずっと背を向けていた菊池が振り返った。

「守りたい奴がいたんだ。」

笑いながらそう言った菊池の顔は、笑ってるようで泣いているようだった。

それ以上は聞かなかった。いや、聞けなかった。

そっか、喉から絞り出した言葉だった。

「別にこの学校の頭になる気もねーし。お前も安心してていいよ。」

今度こそ菊池は立ち去ろうとした。

『それって！』

思わず大声を出していた。

『中島健人のこと？』

菊池の雰囲気が変わった。

「ちげーよ。」

そういい残して菊池は去った。