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＿＿5月3日 夜
いよいよ本格始動した合宿。
「ラスト1本に何本かかってんだ！集中しろ！」
「も、もう1本…っ！」
「山口、ナイスレシーブ！」
「5本成功です、交代！」
「山口お疲れ！はい、タオルとドリンク！」
昨日鵜養コーチが言っていた「穴だらけ」の穴を無くすため朝から重点的に行われたレシーブ練。
3年生はもちろん、リベロのノヤ、ずっとバレーにストイックだった飛雄は素人目から見ても上手い…というより身体に染みついてるのがよく分かる。
その際立つ存在がいるからこそ、レシーブがまだまだちょっとな方も目立ってしまう。
(変人速攻で攻撃力は上がった。レシーブ強化で守備力も上がれば…スゴいチームになる！)
『落ちた強豪、飛べない烏』
不名誉且つ望んでもないレッテルを貼られ、それでも腐らず頑張り続けてきた先輩たちを始め、何かが変わろうとしているバレー部に身体の奥がグワッと熱を帯びた。
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合宿に対する興奮も少し冷めたのか昨日より静かな館内をお風呂上がりに歩いていると、明らかに怪しいオーラが漂う大きな影がふたつ。
「大地さん、旭さん、そんなt」
「「しーっ！」」
「そんな所で隠れて何をしてるんですか？」という全文を人差し指ひとつでバッサリ切られ、一体何をコソコソしているのか…壁の向こうを覗いた先に鵜養コーチとスガさんがいた。
「俺ら3年には『来年』がないです」
3年生から発せられるその言葉の重み。
胸がギュッと締め付けられ目頭も熱くなるけど、良くないことだとは思いつつスガさんの次の言葉を隠れながら待つ。
「だから…ひとつでも多く勝ちたい。次へ進む切符が欲しいです。それを取ることが出来るのが俺より影山なら迷わず影山を選ぶべきだと思います」
(っ、スガさん…)
「3年生なのに可哀想、って思われても試合に出られるチャンスが増えるなら何でもいい」
スガさんの決意を正面からぶつけられ「お前らが勝ち進むために俺に出来ることは全部やろう」と力強い言葉で応える鵜養コーチ。
そのやり取りを黙って聞き終えた後「…気合い入れんぞ、1回でも多く勝つ」「おお」と頭上から響く大地さんと旭さんの揺るぎない闘志。
(私も…)
自分に出来ること。
本当にそれが限界？もっと出来ることはない？
みんなが今よりもっとずっと打ち込める環境を。
そんな新たな決意を胸に、首にかけたままのタオルをギュッと握りしめた。
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作者名：華うさ | 作成日時：2024年3月2日 15時
