04. あの人と：西谷夕 ページ4
・
「ノヤ、買って来させていただきました」
「おう！待ってたぜ！」
帰り道も進んだ所で龍が「忘れ物した！取って来る！」と学校にUターン。
ちょうど坂ノ下商店の近くだったこともあり、ガリガリ君を賭けたジャンケン勝負を持ちかけたものの結果は3戦3敗。
「やっぱり言い出しっぺが負ける説は有力だわ」
そんな小言をボヤいている隣でもうすでに食べ始めていたノヤに遅れること数秒、パクっと口に含んだ瞬間広がる爽快感に小さなボヤキは跡形もなく溶けた。
やっぱりガリガリ君は偉大だ。
「ねー、ノヤは悩み事とかある？」
いつも自信家というか前向きな彼にそういったモノがあるのかふと気になり、ノヤの横顔に唐突な質問を投げかけてみる。
「特にねェな」
「即答だね、もはや清々しい」
「滝は何かあるのか？」
逆に振られた質問にベンチで足をブラつかせながら考えてはみるもののパッと出てくる悩みがない…と思っていた矢先、頭上でピコンッと電球が光る。
「強いて言えば、あともう1cm身長が欲しい」
「お前、いま何センチ？」
「159。ちょっとサバ読んで160とか言っても自分では違うって分かってる訳じゃない？それが嫌だから正々堂々と160を名乗りたい」
「分かる…分かるぜ滝。それだと俺もあと0.7cm欲しい」
「だよねー！」と盛り上がっていると「静かにしろ！」と店の奥から顔を出してきた鵜養さんに注意され、年季の入ったドアがピシャッと音を立てて閉められた。
「でもさ、ノヤは大きい男だよ」
「 んぁ？」
「なんて言うのかな…器？存在感？前に大地さんもノヤが後ろにいると安心感が違うって言ってたし…その、実体では計れない部分が大きいと思うの」
「その言葉、潔子さんのお口から聞きたかったぜ」
「ガリガリ君の棒、鼻の穴に突っ込むよ？」
「はははっ」と豪快に笑うノヤに怒るのもバカらしくなり、釣られて「あははっ」と笑みがこぼれ構えていた棒を膝の上に収めた。
「あとさ、うちのみんなはノヤがその身長だからリベロやってるって誰も思ってないしね」
「伸びる時は伸びる！悩んでも仕方ねェ！」
見も蓋もない台詞で締め括られたところで、坂の上から「おーい！」と走ってくる龍が見えた。
▼
『属性：ポジティブ』
▲
「あ、ガリガリ君当たりだ」
「やったじゃねーか！」
「さっきノヤの鼻に突っ込まなくて良かった〜」
「…どんな会話してたんだよ」
・
05. あの人と：田中龍之介→←03. あの人と：月島蛍・山口忠
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華うさ | 作成日時：2024年3月2日 15時
