13章:白頭 ページ13
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御幸「はぁ〜…」
蔵沢「ため息とか珍しいね?緊張してんの?」
御幸「緊張?何で?」
蔵沢「今日練習試合だって聞いたから」
御幸「俺が練習試合で緊張すると思う?」
蔵沢「…ないね」
このため息の原因が練習試合にあるのは間違ってねえっつーか…
今日対戦する学校の特定の奴に向けられてるっつーか…
成宮「あっ!いたいた、一也ぁ〜!」
…来た
御幸「ひさしぶりだな、鳴」
成宮「あんま嬉しくなさそうじゃん」
御幸「はっはっは、んなこたねーよ」
成宮「絶対ウソだね!それよりその子誰?青道のマネさん?」
再会の挨拶もそこそこに、鳴の視線が隣に立つ蔵沢に向けられる。
御幸「夏休みだけマネしてもらってんだよ」
成宮「へぇ〜すっごく可愛いね!名前は?」
出会って数分で『可愛い』か…
蔵沢「蔵沢Aです」
成宮「Aちゃんね!俺は稲城実業1年の成宮鳴、鳴って呼んでくれていーよ」
蔵沢「え〜っと…め、鳴くん?」
苗字を呼び捨てにするだけで、手こずってた俺の努力って…
成宮「ところでさ、一也とAちゃんの関係って?」
蔵沢「か、関係?…クラスメイトだけど」
成宮「ほんとに?それだけ?」
蔵沢「う、うん…」
「ふ〜ん」と意味深な目つきで、こっちを見てくる鳴。
成宮「クラスメイトだって、一也」
御幸「…別に間違ってねーけど?」
成宮「はははっ、そんな怖い顔しないでよ」
御幸「お前…また黙って来たんだろ?原田さん迎えに来たぞ」
なかなか戻ってこない鳴を探しに来たのか、呆れた表情で「いい加減にしろ」と言い放つ原田さん。
御幸「ほら、早く行けよ」
成宮「さっきから冷たくない?あっ、そーだAちゃん」
蔵沢「何?」
成宮「一也の捕手としての強みって何だと思う?」
蔵沢「…え?」
成宮「正解は『強気なリード』だからAちゃんも気を付けなよ♡」
御幸 / 原田「「鳴!!」」
成宮「うわっ!一也と雅さんがハモった!」
「じゃあ試合でね〜」と原田さんに引きずられながらやっと去っていった嵐。
蔵沢「何かスゴい人だね、鳴くんって…」
御幸「試合じゃ負けらんねーな」
蔵沢「試合じゃ?何か負けてたの?」
御幸「…さっ、俺らも戻るか」
『可愛い』も言ったことねェし、下の名前だってまだ呼んだこと…
ヒョイヒョイっと山を越えて行った鳴を、悔しいと思うより、羨ましく思う気持ちの方がずっとずっと大きかった。
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作者名:華うさ | 作成日時:2016年5月20日 22時