【◇】君が名付けた場所 (ページ11)

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11章：葛藤ページ11

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御幸「…俺、幸せすぎてヤベェかも…」

倉持「ならそのまま死んじまえ」

御幸「お前にも幸せ分けてやろーか？」

倉持「…ウゼェ…いつにも増してウゼェ…」

一学期最後の放課後練が終わり、明日から始まる夏休み。

夜のミーティングも終わり、バットを片手に自主練へ向かう途中、倉持に浮かれた感情をぶつける。

御幸「席替えして急接近だからな～」

倉持「アレはたまたまじゃねーか」

御幸「たまたまでも、事実は事実だろ？」

倉持「へーへー」

マジでウザくなってきたのか、相づちも適当に、左耳に小指を差しながら顔を逸らす倉持。

…のことは気にせず、一方的に話し続ける俺。

御幸「呼び捨てで呼ばれるようになって、テストの時初めて手も触って、夏休みも毎日会えるとか最高だろ」

倉持「はぁ？テスト？何だそれ」

御幸「あの時の消しゴムには感謝しかねェわ」

倉持「あぁ～何となく分かったけどよ…御幸、お前って意外とロマンチスト？」

御幸「………」

倉持から出た『ロマンチスト』という単語に、柄にもなくお喋りになっていた自分を思い返し、咳払いをひとつ落として冷静さを取り戻す。

倉持「で、いつ言うつもりなんだよ？」

御幸「何が？」

自分でも薄々考えてただけに、最後まで聞かずとも分かるその質問に対して、あえてはぐらかして聞いてみる。

倉持「何がって…告んねーの？」

御幸「あぁ…そだな」

倉持「もしかしてビビってんのかよ」

御幸「そんなんじゃねーよ…」

…図星

倉持「テメェが言わねェんなら、このままずっと『お友だち』だな」

御幸「………」

倉持「モタモタして横から取られても文句言えねーぞ」

俺の方を見ながら「ヒャハハ！」と楽しそうに笑う倉持。

…ほんと

どこまで分かって言ってんのか知らねェけど、痛いとこ突きすぎだろ…

悔しくも的確すぎる倉持の言葉に、何も言えないまま室内練習場へ到着。

御幸(ずっと『お友だち』か…)

イマの関係を壊さねェと『お友だち』以上の関係に進めない…のは分かる。

でも、もしフラれたら？

イマ普通に話せたり、笑ったりしてるのが、出来ねェようになるんだったら…

でも、誰かに取られんのも我慢出来ねェし…

御幸(はぁ～『お友だち』の関係もある意味不便だな…)

そんなモヤモヤした気持ちを振り払うように、黙々とバットを降り続けた。

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