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昔の話、一つ目 ページ38

夢side

私、物心付いた時から独りぼっちだったんだ。所謂(いわゆる)“孤児”ってやつ。別に家族が欲しかった訳じゃなかったし、其れ自体に不満は無かったんだよね。

私は孤児院で虐められていた。
きっと理由は大した事じゃ無かったんだと思う。でも、小さな所だったからあっという間に私は孤立した。

そして、私は───








──────命を絶つ事に決めた。


其れこそ、切っ掛けなんて覚えていない。日々の積み重ねで容量不足(キャパオーバー)になったのか、もう全部どうでもよくなったのか。私は、二階建てだった孤児院の屋上から飛び降りた。



───次に(・・)目を開けたとき、私は地面に寝転がっていた。傷ひとつ無く、昼寝から目覚めたように、そして此の一連の出来事全てが其の夢だったかのように。

異様なのは、私を護る(縛り付ける)ように私の周りに散らばっていた無数の羽根だけだった。

『な…なんで……なんで、私は目を、開けてしまったの…?』

失敗した。そう考えた私に、孤児院の奴等の聲が幻聴(聞こ)えた。

「ずっと真顔だなんて、気持ち悪い…」

「あんなの人間じゃないわ!」

『違う!私は、人間で…』

聲の方を見ても其処には誰も居なくて、寂しそうな木が静かに揺れていた。

『わた、しは、にんげ…』








·····本当に?二階から落ちて、死ななかったのに?酷い言葉を浴びせられても顔色一つ変えないのに?落ちようとした時だって、一欠片も恐怖なんて感じ無かったのに?


















『·····厭だ。』

そんなのは、厭だ。もし、そうだとしたら、彼奴らの云う事を肯定する事になる。

『そんなの厭だッ!』

彼奴らの云う事を、“私は人間じゃない”事を否定しなければ。どうしたら、どうしたら人間になれるのだろう。得体の知れない化け物じゃなくなるのだろう。

『·····そうだ、判った。』




───今度こそ、ちゃんと、死のう。




生きとし生けるもの、全てが何時か死ぬ。なら、私も死ねば、化け物じゃないと、お前らと同じ人間だと云えるんじゃないか。



其れから私は孤児院から逃げて、沢山の方法を試した。
でも、どれ一つ上手くいかなくて、ただ(ぼんやり)と裏路地を彷徨う日々だった。


其の時だよ。私が、太宰さんと出会ったのは。

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MR - 虚式紫に飛ばされたのに、文才がある。。。つまり作者最強(最高) (2月12日 19時) (レス) id: 4014042a90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Awoikamo | 作成日時:2023年12月11日 18時

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