八拾玖 ページ43
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ガサガサと背後から物音がして、義勇は歩みを止めた。
ゆっくりと刀に手をかけて音の方向へと神経を張り詰める。鬼の残党なら斬らねばならない。
だがしかし、一度山を降りて戻ってきた今、最初よりも鬼の気配が希薄になっていることも事実だった。
Aはやはり頼もしいな、と込み上げる笑みを抑えていた義勇である。
『義勇ちゃんみっけ!!!』
揺れた草むらからヒョコリと頭を出したのは、頭の上に葉をつけたAであった。
あまりにも緊張感のないその顔に少し肩の力を抜いた義勇は、刀にかけていた手をおろしてAのほうを見据える。
「……もう終わりか」
『手こずったわぁ…十二鬼月成りかけ!みたいな鬼やったからな』
ま、首は落としたし一件落着やろ!と隣に並んだA。
2人はゆっくりと山を降りることにした。
『あ、せや。りょおちゃん届けてくれた?』
「途中で寝てしまったからな。時惟のところに預けてきた」
『トキのとこか。でっかいお屋敷やったもんな…俺もあんなん住みたいわ』
「……いまでも十分大きいと思うぞ」
『あっ、でも広い家に俺一人ってのも寂しいわ。いっその事、柱のみんなでシェアハウスでもしてみよか』
「しぇ…?なんだそれは」
他愛のない会話をしながら山を降りた2人。
義勇はAの隣を歩きながらその横顔を見た。
ほんのりと汗で濡れた白い肌に束になった髪が貼り付いている。
朝の光を受けて僅かながらに紫色へと変わる髪が、肌の白さ相まって色濃く見えた。
前方を見すえる碧い瞳に長い睫毛が重なって、やはりこの男は美しいと義勇は思う。
だが同時に、今日はその美しさに影があると勘づいていた。
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karion(プロフ) - こんなに感動したのは久々で思わず泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)続き楽しみにしています(≧∀≦) (5月19日 17時) (レス) @page50 id: d59aca9a13 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - トカゲさん» ありがとうございます!ただいま制作中ですので、お楽しみに!! (2020年5月14日 17時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
トカゲ(プロフ) - すごい面白かったです!!続きが気になっております!続編頑張ってください! (2020年5月10日 22時) (レス) id: 8140af0e98 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - スリーパー(?)さん» 涙まで……!!ありがとうございます、本当に嬉しいです!更新、頑張りますね!もう少し、静柱のお話にお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 雪もちさん» その言葉だけでも励みになります!ただいま下書きに勤しんでいますので、今後も応援のほど、よろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年10月20日 19時