八拾漆 ページ41
『……っはぁ、……』
「…………」
身体から離れた少年の首は、ポスン…という柔らかな音を立てて枯葉の上へと落ちた。
Aは肩で息をしながら体勢を戻すと、そちらの方へと駆け寄っていく。
そして、まだ形を留めたままのその首と胴の近くに座って、そっと髪を撫でたのだった。
「…………にぃ、ちゃん」
『……待たせてごめんなぁ』
「……勝手に、おらんようなって…ごめんなさい…」
『…ホンマやで…心配させるんちゃうわ、アホ』
小さく声を震わせながら、Aは真白の頭を撫で続ける。
ようやく目が合った顔を見ながら、Aは優しく微笑みかける。
いつの間にか星の数が減り、明け方が近づいていた。
風は静かに木々を揺らし、擦れる葉の音がやけに大きい。
『……おかえり、真白』
えへへと穏やかに笑う真白の顔は、姿こそ変わってしまったものの、記憶の中にある弟の笑みの面影を残していた。
それにハッと気がついたAは、その碧い瞳を少しだけ揺らす。
「……ただいま」
会えてよかった、
救えなくてごめん、
言いたいことや伝えたいことは山ほどあった。
しかし、言葉というものはそう簡単に流れ出てきてはくれないものだ。
Aは何度も口を開け声を絞り出そうとしたが、心の中に溢れかえった大量の言葉は、喉で詰まって出てこない。
謝罪か安堵か、先に述べるべきはどちらなんだろう。
その両方が我先にと口先に集まる。
結局、Aの耳に届くのは乱れた己の呼吸でしかなかった。
「…………にぃちゃんは、やっぱりかっこええね」
穏やかな顔をした真白は、兄の方へと腕を伸ばす。
それに気がついたAは胴へと寄った。
そしてその上がった腕に触れると、自らの頬へと導いた。
兄の目元を撫でるように動く真白の指。
生きているものとは思えないほどに冷たいその感触に、Aは眉を寄せた。
「……僕の、」
僕の、にぃちゃんはにぃちゃんだけや
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karion(プロフ) - こんなに感動したのは久々で思わず泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)続き楽しみにしています(≧∀≦) (5月19日 17時) (レス) @page50 id: d59aca9a13 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - トカゲさん» ありがとうございます!ただいま制作中ですので、お楽しみに!! (2020年5月14日 17時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
トカゲ(プロフ) - すごい面白かったです!!続きが気になっております!続編頑張ってください! (2020年5月10日 22時) (レス) id: 8140af0e98 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - スリーパー(?)さん» 涙まで……!!ありがとうございます、本当に嬉しいです!更新、頑張りますね!もう少し、静柱のお話にお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 雪もちさん» その言葉だけでも励みになります!ただいま下書きに勤しんでいますので、今後も応援のほど、よろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年10月20日 19時