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八拾参 ページ37

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周囲の音が一瞬にして消える。
だがその太刀筋を見極めたかのように少年は身を翻した。切っ先が掠めたのは虚空。本体に届かなかった刀身は、宙に舞う髪2、3本を斬っただけだ。

続いて攻撃を仕掛けても躱されるばかりで、まるでAの動きは全て読まれているかのようだった。






「……きもちわるい……」






呟いた少年は地面を蹴った。Aの間合いに入り、小さな身をよじると……






『……っく…………!!』






Aの懐に潜り込んだ。

ドンっ!!!!という鈍い音と共に吹き飛んだAは、その勢いのまま木の幹にぶち当たる。
背中から伝わる衝撃に、内蔵が全て押し出されるような感覚がした。
少年はそのまま1度下がって、また地面を蹴る動作をする。目の端でそれを捉えたAは飛び上がり、木の上を逃げた。だが体制を整える前に再び体当たりを食らう。

逃げても、その先には少年の姿があった。






「……しってるんだよ、そのナマエ……」






Aの速さと同等、もしくはそれ以上の速さで攻撃を繰り出す少年は、脇腹を押えたAに近付きながらそう言った。
Aは隙を与えまいと呼吸を絶やさない。
なるべく早く攻撃を見極めて避ける必要があった。
だが距離を保っても、何度も何度も食らってしまう。




惑わされるな






『……』






白黒世界を生きるAの目に映るのは、鬼の色が濃いだけの少年ではない。
深い悲しみと、憎しみ、さらには喜びまでもが入り交じり、まるで感情を覚えたての幼子のような乱れた色を纏ったひとりの人間なのだ。
生々しい感情の色が、Aの目に映る。

少しの同情と混乱が、噎せ返るほどに鮮やかな色を見せてくるのだ。




今はやられても大丈夫……真白自体は意識さえ飛ばんかったら俺の力でどうにかなる……ただ……






「……なんで、しってるんだろうねそのナマエ…………覚えてナイ…ワカラナイ……!!」

『真白!!』






この際、正気が戻るならなんでも良かった。
気が緩めば隙が生まれる。
隙が生まれでもすれば、厄介な血気術にもボロが出るだろう。
そうなったらあとは間合いを詰めるだけだ。

下弦よりは強いが上弦ほどでもない少年の力を学習していきながらAは攻撃を速めていった。

八拾肆→←八拾弍



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設定タグ:鬼滅の刃 , 男主   
作品ジャンル:アニメ
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karion(プロフ) - こんなに感動したのは久々で思わず泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)続き楽しみにしています(≧∀≦) (5月19日 17時) (レス) @page50 id: d59aca9a13 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - トカゲさん» ありがとうございます!ただいま制作中ですので、お楽しみに!! (2020年5月14日 17時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
トカゲ(プロフ) - すごい面白かったです!!続きが気になっております!続編頑張ってください! (2020年5月10日 22時) (レス) id: 8140af0e98 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - スリーパー(?)さん» 涙まで……!!ありがとうございます、本当に嬉しいです!更新、頑張りますね!もう少し、静柱のお話にお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 雪もちさん» その言葉だけでも励みになります!ただいま下書きに勤しんでいますので、今後も応援のほど、よろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年10月20日 19時

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