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七拾 ページ24

義勇たちと別れてから数分がたった。
辺りの霧が濃くなって、視界がだんだんと悪くなる。常に白黒世界を生きているAにとっては少しばかり分が悪い。
足を滑らせて怪我でもしたらそれこそ格好がつかないと慎重に歩みを進めるAだが、木々の根を覆う水滴は苔と妙な連携をとって見事に足元を悪くする。



『おっ……と、』



ゆらり……と体のバランスを崩してよろめいたA。
咄嗟にもう片方の足で身体を支えて倒れ込むことは防いだが、一瞬冷や汗をかいた。言ったそばからコケるところだ。

危ない危ない…と体制を立て直してAは周りを一度見回してみた。



…………なにか、様子がおかしい。



先程から同じ道をたどっている気がするのだ。
森の中、視界も悪い上に似たような木も多いため、気のせいかと思っていたAだが、これはいよいよおかしいなと思った。




『……この木…さっきも見たような気がするんよな』




木の幹に大きな傷のある木。
枝振りがとても立派な大樹だ。
その黒い幹をそっと撫でたAはその曖昧な違和感を確信へと変えた。

やはりここは一度通っている。

だがしかし、Aは決して方向音痴などではない。
どちらかと言うと、方向に関しては冴えているつもりだった。だとすると可能性はただ一つ。



血気術。



そんな言葉がAの頭に浮かんでは消える。
厄介な血気術だ。見事にやる気を削いでくれている。
Aは後頭部を掻きむしった。恐らく八十八の父の身に起こったのと同じものだろう。




『……コソコソしてへんで、出てきたらどうや?相手ならいくらでもやったるで』




霧に混じって見える鬼の色。
先程までの鬼とは明らかに違うその色の濃さは、相手が強者であることを意味している。



さて、どんな奴と手合わせせなあかんのかな…?



そう思いながらAは腰元の刀に手をかけた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 男主   
作品ジャンル:アニメ
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karion(プロフ) - こんなに感動したのは久々で思わず泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)続き楽しみにしています(≧∀≦) (5月19日 17時) (レス) @page50 id: d59aca9a13 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - トカゲさん» ありがとうございます!ただいま制作中ですので、お楽しみに!! (2020年5月14日 17時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
トカゲ(プロフ) - すごい面白かったです!!続きが気になっております!続編頑張ってください! (2020年5月10日 22時) (レス) id: 8140af0e98 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - スリーパー(?)さん» 涙まで……!!ありがとうございます、本当に嬉しいです!更新、頑張りますね!もう少し、静柱のお話にお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 雪もちさん» その言葉だけでも励みになります!ただいま下書きに勤しんでいますので、今後も応援のほど、よろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年10月20日 19時

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