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五拾玖 ページ13

『なるほどねぇ…鬼の姿を見たんはヤッさんのオトーサンだけってことか』

「そうなりますね…。この町も人が減っていますのでお役に立てる人数もそうはおりませんが…」

『いんや、町のモンの手ぇは借りへんよ。俺と義勇ちゃんで大丈夫や』

「ですが、助けを乞うておる身でございます。援護ぐらいはさせていただきたいのですが」



前のめりで時惟はAに頼み込む。

Aは胡座をかいて顎を引き、腕を組んで時惟の目をまっすぐ見た。
深い紫の髪が両眼にかかり、少し艶っぽい。



「……っ」



時惟はその髪の隙間から覗く鋭い碧眼に見据えられヒュウと喉が鳴った。
腰に携えられた刀然り、Aの纏う雰囲気というのは一般人にとって堪えきれないほどの恐怖心を抱かせることがある。そして対峙した者に、まるで刀の切っ先を喉元に突きつけられているような緊張感を与えるのだ。


現に今、時惟は背筋に冷たいものが伝ったような感覚に陥り、ゴクリと唾を飲み込む。



『…トキは、人を斬ったことがあるか』



冷たく、重い声だった。



「…いえ、ございません」

『ほかの町のモンは』

「……刀を握ったことの無い者ばかりです」



時惟は無意識に声が震えていた。

体が動かない。
まるで金縛りにあったかのようにその場から動けなかった。


Aはというと鋭く時惟を見つめたまま静かに呼吸をしている。
諭すような、試すような、そんな視線だった。



『鬼を斬るっちゅーことは、人を斬るのと同等のことや。あんまり気安く口にせん方がええ』



そうとだけ言ってキッパリと断ったA。

自らを鬼狩りだとAは言ったことがなかった。

鬼だろうと何だろうと元々は人間。
人間だった者たちを斬っている自分は、鬼斬りではなく人斬りなのだと言い続けていたのだ。

少し肩を落とした時惟の背をポンと叩く。



『俺らに任せとき。一応鬼殺隊でも強い方やねんから』



な?と首を傾げて人のいい笑みを向けたA。
その眩しいほどの美貌に見惚れながらも、おずおずと時惟は頷いたのだった。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 男主   
作品ジャンル:アニメ
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karion(プロフ) - こんなに感動したのは久々で思わず泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)続き楽しみにしています(≧∀≦) (5月19日 17時) (レス) @page50 id: d59aca9a13 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - トカゲさん» ありがとうございます!ただいま制作中ですので、お楽しみに!! (2020年5月14日 17時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
トカゲ(プロフ) - すごい面白かったです!!続きが気になっております!続編頑張ってください! (2020年5月10日 22時) (レス) id: 8140af0e98 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - スリーパー(?)さん» 涙まで……!!ありがとうございます、本当に嬉しいです!更新、頑張りますね!もう少し、静柱のお話にお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 雪もちさん» その言葉だけでも励みになります!ただいま下書きに勤しんでいますので、今後も応援のほど、よろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年10月20日 19時

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