卌漆 ページ49
「Aさん、任務ですか?」
部屋の荷物がまとめられていることに気がついていたのだろう。炭治郎がAにそう聞いた。
『おん、怪我も治ったしそろそろ動かななぁ…炭治郎たちは?』
「俺たちはまだです。…単独任務ですか?」
『いんや、義勇ちゃんと一緒。何やかんやで呼吸の相性ええしな俺ら』
「派生でしたっけ」
横から善逸も口を開く。
伊之助は何やら石拾いを始めていた。
『そうそう、水の呼吸が元やからな』
「……Aさん、」
『ん?』
「火の呼吸って、知ってますか?」
『ヒの呼吸?』
「はい…しのぶさんには分からないと言われてしまって。煉獄さんなら知っているかもと言われたんですけど、Aさんも何か知っていないかと思って」
Aは首を捻る。心当たりがないらしい。
日…ではないんか。と考える程度で、他に考えなど浮かばなかったAは、知らんわ、すまんなと炭治郎に言った。
炭治郎はいえ、ありがとうございますと丁寧にお礼を言う。
礼儀のできた子だと、改めてAは感心した。
「おい碧眼!」
『遂に野郎もつかんようになったんか…どうしたん、いのちゃん』
ずっと石拾いをしていた伊之助がズイ、と右手をAに押しやる。
恐る恐るAが受け取ろうと手を伸ばすと手のひらに何個かの白い石と木の実が乗っていた。
恐らく話し込んでいるうちに採って来たのだろう。
『……?』
「任務なんだろ!やる!」
「伊之助!またお前は余計な…」
善逸が声を上げかけたがA の表情を見てやめた。
『おおきになぁ、いのちゃん』
大事にするわ、と言ったAの表情は柔らかい。
……あ、
炭治郎と善逸には分かっていた。
心から、本当に嬉しそうに、Aは手のひらのそれらを見つめている。
痛いほどに優しい音が、甘すぎるほどに優しい匂いが、この2人にAの人の良さを教えている。
Aは懐かしかったのだ。
幼い日の弟、自らの弟も同じことをしてくれたと。本来なら正反対と言っても過言ではない伊之助と真白を重ねていた。
『……ほら、はよ戻り!しーちゃんに俺までどつかれるやろ』
ほらほらと彼らの背中を押したA。
手のひらの中の石と木の実をもう一度愛おしそうに眺めて、羽織の裏にある巾着の中へと大事そうに仕舞ったのだった。
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隆弘 - 誕生日一緒だァァァァァ⁉︎今日から読み始めるので楽しみって感じです‼︎ (2022年7月25日 0時) (レス) @page1 id: 4c1fa166fb (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 拙い説明で申し訳ありません……!ですが、ありがとうございます! (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - ルルさん» ご指摘ありがとうございます!紛らわしい書き方をして申し訳ございません…あくまで、炭治郎には火の呼吸という認識をワザとさせています。その後の閼伽が「日…ではない」と語っていますので、ここの間違いは意図的となります (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊しちでした (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊じゅう話の炭次郎が言ってる呼吸が日の呼吸ではなく火の呼吸になってます (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年9月25日 21時