廿伍 ページ26
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『…………っ』
荒れ果てた店の中。
噎せ返るような鉄の匂い。
夕暮れの赤と着物を濡らした赤が、Aの両眼がこの世界を映した最後の色だった。
(…なんで、)
両親だったのであろうふたつの塊は、判別ができないほどに変わり果てていた。
残っていたのは着物を着た体だけ。
見覚えのある忍冬文が、赤く染まっている。
あまりに残酷すぎるその光景に、Aの喉がヒュウと鳴った。
「…にぃちゃ…?」
様子のおかしい兄に疑問を抱いたのか、小さな手を兄の羽織に伸ばし遠慮がちに引っ張った真白。
『…オトンら、先に帰ったんかな?
ほら、真白。こっちおいで』
震えた声を悟らせまいと己の背後に弟を隠した。
まだ4つになったばかりの弟にこの光景は厳しいものがある。
そう判断したAは静かに弟を抱き上げると、その頭を自らの肩口に抱き寄せ、ふらつく足に力を込めて歩みを進めながらその場をあとにした。
強盗に襲われたのだと聞いたのはそれから三日後のことだった。店は見事に荒らされており、両親はお客を守るために犠牲になったことも聞いた。
人間の手で、Aの両親は殺されたのだ。
姉の泣き崩れる声。弟は理解出来ずにその瞳を濁らせる。
なんとも言えない怒りと、自らに対する恨みがAを襲った。
両親に【死期の色】が付いていたことに、Aはだいぶ前から気が付いていた。
そして、それを一度防いだこともあった。
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隆弘 - 誕生日一緒だァァァァァ⁉︎今日から読み始めるので楽しみって感じです‼︎ (2022年7月25日 0時) (レス) @page1 id: 4c1fa166fb (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 拙い説明で申し訳ありません……!ですが、ありがとうございます! (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - ルルさん» ご指摘ありがとうございます!紛らわしい書き方をして申し訳ございません…あくまで、炭治郎には火の呼吸という認識をワザとさせています。その後の閼伽が「日…ではない」と語っていますので、ここの間違いは意図的となります (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊しちでした (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊じゅう話の炭次郎が言ってる呼吸が日の呼吸ではなく火の呼吸になってます (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年9月25日 21時